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学園ノ噺
想いは届かないのでしょう

僕は生徒会長親衛隊隊長、北間碧(ホクマミドリ)。
華里会長様が大好きで、大好きで、仕方なくて、親衛隊に入り最速で隊長にまで上り詰めた。

華里会長様は、孤高の美しく獰猛な獣、たとえば、豹のようなしなやかさを持つ美形だ。
光の加減によって黄金色に見える茶色の髪、静かな瞳の中に鋭さを持つ金茶の目。

一目惚れだった。

そんな馬鹿みたいなことなんかある訳無いって思った。
第一、自分は男だ。
長男ではないから、跡継ぎ云々の問題はないけど…。
でも、自分を否定しきれなくて今の地位にいる。



「隊長ぉ?話し聞いてるぅ?」

「あ、ごめ…ゴメンなさい。」

「いい加減、隊長やめてくんなぁい?制裁もしようとしないしさぁ。」

「でも、会長様が選んだ方ですから…。手を出す方が野暮ですよ。」



そう…一ヶ月前、転校生が来た。
見た目はどこの時代かわからない根暗オタク。
天真爛漫で、会長様たちが言う通り、太陽みたいな子だ。
この学園にはいない…。

それに引き付けられたのか、会長様を始めとする方々が、転校生を好きになっていった。

今も食堂の僕が座ってる場所から彼らの楽しげな姿が見え、ツキリとどこかが痛む。



「…たい、ちょ、」

「え?」



辞めろ、と言ってきた親衛隊の幹部が泣き出した。
僕はどうしたらいいのかわからない。



「…隊長、お願いだから辞めてよぉ。隊長の悲しい顔、見たくないよぉ…」



悲しい、顔?



「そんな顔、してるんですか?」



そう言った貴方の方が悲しい顔してるじゃないか。



「たい、ちょ…ずっと会長様のこと、好き、だったの、に…ひどいよぉ……!」



ツキン…



「大丈夫ですよ。最初から、望みのない恋だったんですから。少しの間でも近くにいれただけで充分です。」



そう言うと、周りにいた幹部の子たちまで泣き出してしまった。

痛んだ何かを無視して、とにかく大切な子たちが泣き止んでほしくて微笑むと、幹部の子たちは抱き着いてきた。

暖かい温もりと、涙の雫の冷たさがワイシャツを通して伝わってくる。

変に安心する。
何も良いことなんかないのに、大切な子たちが涙してくれて嬉しかった。
思われているんだ、と皆を受け入れながらわかった。

けれど…



(そろそろ貴方を諦めるべきなのかもしれません。)

(それでも、まだ諦めきれないのは僕が醜いからでしょうか?)





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