学園ノ噺
2
校舎前に来ると、何か黄色い声が響いていた。
が、それよりも、オレは美季につかまれた手が気になる。
「み、美季!」
「なぁに?」
「あの、手!手、離して!」
「え〜…。」
「そこで渋るな!なんか、視線が痛い!」
「…仕方ないなぁ。」
渋々ながらも離れてくれた美季にホッとしていると、今度こそ黄色い声に意識が向いた。
「ねぇ、美季。」
「うん?」
「ここ男子校だよね?」
「そうだよ。」
「何で黄色い声なんかが聞こえるの?」
いや、若干黄土色っぽいけども。
「人気者でもいるんじゃない。」
「は?」
「イケメン、美形、可愛い子ちゃん」
「あ、理解。」
つまりはあれか。
人気アイドルに対しての声か。
…で、今までのことから総合すると何かわかってしまった。
嫌だなぁ…。
「昇降口で、入学式の受付してるみたいだね。」
「で、そこにいらっしゃるイケメン、ってことね。」
「そ。」
イケメンへの羨望はある。
羨ましい…。
だが、男からの賛辞は欲しくないがな!
「ほら、さっさと受付済ましちゃお!」
「うん。」
あの黄色い声の中に入ってくのは、気が全くと言っていいほど進まないが、いつまでも外にいるわけにはいかない。
受付の列に美季と並んで、他愛もない話をする。
「今日、昼はどうする?」
「ん〜…じゃあ、食堂前に集合ね。」
「わかった。夕飯は?」
「シチュー!」
「オッケ。荷物運びな?」
「え〜!」
「文句言うな。」
「だって、」
「それに、案外見た目に反して力持ちって知ってんだからな?」
忘れたとは言わせん。
最初に、食材を買いに行ったとき、わざわざ重い方を持ってくれたのだ。
可愛い見た目に反して、男らしくてちょっとドキッとしてしまった。
あ〜…、やばいやばい。
このままじゃ、いつこの学園の噂の餌食になってもおかしくないよ…。
気を付けよう。
オレは、ノーマル。
オレは、ノーマル…。
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