学園ノ噺
ホールスタッフの至福
オレたちホールスタッフは、生徒が全員捌けた1時からお昼休みだ。
この時間が、一番待ち遠しい。
何故かって?
そりゃ…
「稜、これ新作なんだけどどうだ?」
「食べます!いや〜、早海さんの料理すっごく美味しいんですよね。本当にここに来てよかった。」
食材が高級だろうとなんだろうと、料理チーフ、早海さんの手にかかればどれも美味しくなる。
タダだし。
「取ってあげようか?」
「あ、ありがとうございます!」
千葉さんから渡された、早海さんの新作を食べる。
「〜〜〜っ!!」
「ハハ、美味しいって顔だな。良かった良かった。」
「これ、食堂に出すんですか?」
「ん?そうだな…。稜が美味しい、って顔する奴は大体受けがいいからな。コスト的にもあまり高くつかないし。」
「うぅ…ここの学園の泣かせどころですよね。」
「何でもかんでも高級志向ってのは、やってて飽きてたとこだからお前が来て助かった。」
「いや〜、数学の市川先生に統計学ついでにアンケート出してもらったのが良かったんですよ。」
「…おま、市川とも繋がりがあるのかよ。」
「はい。どうかしましたか?」
ハァ…、溜め息を吐き、眉間を指で押さえる早海さん。
そして、いい笑顔でオレを見る千葉さん。
「稜、」
「…はい」
「これ以上ライバル増やさないでよ。」
「?」
「わからないだろうけどね。」
「はぁ…?」
「いいよ。稜は、稜らしくしてれば。ライバルがいるのも燃え上がるし。ねぇ、早海?」
「だな。負けるつもりはねぇよ。」
「同感。」
よくわからない会話だ。
こういうのが時々ある。
同僚たちや料理スタッフは、またやってるよ、という目で見てきた。
何か申し訳ない…。
「あ、稜君!僕たちのも食べてみてよ!」
「え、新作?」
「うん!」
「梶浦の舌は、チーフが信用してるくらいだから、いいアドバイスとかもらえたら嬉しいな。」
「ちょ、梶浦だけずるいぞ。」
「そうそう!梶浦だけ美味いもの食いやがって!」
「あ、ちょ、先輩小突かないで。」
いい仲間たち。
いつものような光景。
楽しい空間。
みんなで楽しめる時間。
「みんなで、食べましょう。その方が美味しいですよ!」
おかしな学校だけど、最高の居場所だ。
そして、オレの至福…。
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