学園ノ噺
2
なんだかんだ言って、生徒会のやつらはいいやつばっかだし、生徒も頼もしい奴らばっかだ。
面と向かって、将来俺に仕えたい、と言ってきたやつらもいるのだ。
ちなみに、そいつらとは契約済み。
断る理由もねぇし、自ら率先して俺に仕えたいやつらに使えねぇやつなどいないしな。
生徒会のやつらも仕えたがったが、それだけは断った。
あいつらとは対等な、独立した立場にいたい。
同じ立場で競えるライバルになってほしいからな。
「俺を無視すんな!」
「っ!離せ。」
すっかり忘れていた転校生に、半端ない力で腕を掴まれ顔が歪む。
「やだ!」
「痛ぇんだよ。力加減くらいできんだろ、ノータリン。」
「そんなん今は関係ないだろ!いいから、名前教えろよ!」
「うっせぇな…。」
「あ、俺は」
「いい。聞く気ねぇし。一文の得にもなんねぇ奴の名前なんぞゴミみたいなもんだし。」
「得ならあるぞ!」
「なにいっ…んむ!」
………………。
…マジ、最悪。
周りの声も聞こえないほど、俺は一気に真っ暗な谷底に落とされた気分になった。
無意識にへたりこむと、誰かが抱きしめてくる。
守るように…。
けど、そんなことすらも今の俺にはわからなかった。
「きり…やぎ、り…夜霧…」
カツーン…
「聞こえた…、八尋。嗚呼…そこ、か。」
俺の耳にも届いた唯一の声。
幼なじみで、周囲の人から恐れられる、俺の唯一の存在。
カツーン…カツーン…
ゆったりと近づいてくる彼は、狂気も隠さずに真っ直ぐ俺のもとに来た。
「吉柳院、様…」
一人の生徒が思わず彼の名字を呼んだ。
「八尋、」
「夜霧…俺、あ、あぁ…」
「落ち着いて?大丈夫、私は八尋から離れない。大丈夫…」
抱きしめてくれる彼、吉柳院夜霧。
唇でそっと涙を吸い取られる。
「鈴木、」
「は、はい!」
「私の大切な八尋を守れ、と言ったはずだが?」
「す、すみま」
「すみません?そうだな。済むわけない。」
夜霧の怒りが揺らめく。
人とは思えないくらいの殺気、狂気、憤怒が空気を重く、暗く、歪める。
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