学園ノ噺
3
昼休み、中新田は食堂へルンルンと向かっていった。
きっちり仕事を終わらせてるから、あとは好きにしろ、と言ったら、さっさと生徒会室から出ていった。
中新田は見た目チャラいし、下半身ゆるゆるだが、やることはきちんとやる。
勿論ヤることは、もっとヤる。
ただ、線引きははっきりしているから、何の問題もない。
セフレの子たちも、きちんと弁えているから、修羅場になんかならねぇ。
マジで不本意なことに、俺が本命らしいしな。
マジ死ね。
「ツル先輩、例の転校生、かなりやばいッスよ。」
「あ?そんなん資料読みゃわかる。」
「それだけじゃなくて…」
すると八江沼は大きな目をすっと細め、情報屋『Roro』の顔に変わった。
「…吉柳院一家のイカレ雪の不興を買ったようッス。」
「!」
声を低めてそう告げた『Roro』の情報に目を瞠る。
吉柳院一家とは、由緒正しい昔ながらの極道だ。
表では、慈善活動やら、ベンチャー企業やら、多岐分野に手を出しているやり手の事業一家。
裏では、暴力団による犯罪の抑制とお目付け役。
まぁ、所謂番犬みたいなもんだ。
海外の裏社交界にもよく出るようで、海外にも認められている。
そんな極道一家だ。
ただ、その一家には危険人物がいる。
『イカレ雪』やら『異端児』、『鬼子』と呼ばれるそいつは、一応、俺の幼なじみだ。
そいつは、いつもは穏やかで、思慮深く、身内思いで、吉柳院一家の当主にピッタリなんだが、一度怒らせると、何をするかわからなくなるらしい。
それこそ、笑顔で人を殺しそうになったこともあるそうだ。
何で仮定なのかといえば、そんな姿は一回も見たことがないからだ。
何度か、いつもと同じポーカーフェイスで、凄惨な現場に立っていたことはあるけどな。
もしやったんなら、他の幹部もいたし、そいつらとやったんだろ。
「ハァ…で、今度は何でキレたんだ?前は、下っ端にちょっかい出されてキレただろ?」
「下っ端じゃなくて、愛猫ッスよ…」
「似たようなもんだろ。」
たしかに、と八江沼は笑った。
「今度は…」
ガチャ…
「……………。」
「…下半身先輩?」
帰ってきたのは中新田だった。
…なんか心なしか、やつれてるような…。
「かぁいちょお〜!」
「うぐっ!」
いきなり抱き着いてきた中新田。
の、喉に腕が…。
「何なの!アイツッ!超不細工なうえに、上から目線で話しかけやがって!しかも、ぐふぁ!」
「耳元で喧しいわっ!普通に喋れ!普通に!鼓膜破る気か!?あぁ!!?テメェの粗末なブツ、刻んで食わせんぞ!?」
「すんません。」
本日二度目の華麗なスライディング土下座に免じて、許してやった。
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