学園ノ噺
2
「ツルせんぱーいっ!!」
バンッ!
「うっせぇぞ、八江沼。もっと静かに入ってこいや。くびり殺すぞ。」
「え!イジメてくれるの?やったぁ!」
「……このドMが。って抱き着くな!」
ぎゅうぎゅうと抱き着いてくるドM、もとい八江沼佑悟。
噂ではかなりのドS…いや、鬼畜と言われるが、明らかMだろ。
しかも真性のM。
「首絞めプレイとか、素敵ッス!あぁ、考えただけでイけ、ガフォッ!」
「広報の仕事はきちんと終わらせたんですか?」
またも、田中の回し蹴りが披露された。
「あぁん?副会長如きが、俺になにしちゃってくれてんスかぁ?」
「制裁を下したまでです。会長を汚そうなどと、1億光年早いわ、ゴキブリ男。」
たしかに、沈めても沈めても、必ず復活する八江沼はゴキブリ並の生命力がある。
だって、さっき沈められた中新田はまだぴくぴくしてるのに、コイツはケロッと…
「ガフッ!」
ドサッ…。
してなかったな。
時間差かよ…。
「会長、」
「あ?」
「広報部にゴキブリ捨ててくるんで、少し空けますね。」
「あぁ。わかった。」
足を掴んで引きずって行く田中を少し見送って、俺は自分の仕事に戻った。
遠くで、階段を下りる音がしたが、ゴキブリのことだから無事だろう。
いつものことだし。
「おい、いつまでも寝てんじゃねぇよ、下半身。」
「会長、ほっとく。俺いるから、いらない。」
「あんなぁ…会計は会計専門の仕事があんの。書記じゃできねぇんだよ。」
「う〜」
「だから、唸るな。仕事しろ、仕事。」
くしゃりと栂池の頭を撫でると嬉しそうな顔をした。
犬の耳と尻尾が見えたのは気のせいじゃないと思う。
まぁ、飴と鞭は大切だからな。躾のうえで…。
暫くすると、生徒会の備え付け電話が鳴った。
「はい、生徒会室です。」
『あ、八尋君かい?私だけど、今夜デート』
「しません。で、何ですか、理事長?」
『連れないなぁ。えっとね………何だっけ?』
無性に電話をぶちりたくなった。
テメェの用なんか知るか。
テメェじゃねぇんだから。
「10秒以内に思い出さないと、切りますよ。」
『えぇっ!ちょ、待っ…あぁ!そう!明日転校生来るから、書類取り来て。』
「…わかりました。」
今度こそ電話を切って、犬と下半身に仕事を押し付けて、理事長室へ向かった。
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