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学園ノ噺
6

萌黄が帰ってきて、いつもの生活が戻ってきた。



「ハァ…」

「萌黄様?どうしたんですか?」



萌黄様に元気がない。
本家で何かあったんだろうか?
心配になって尋ねる。



「あのね、蒼ちゃんだけがボクに冷たいの…。大好きなのに。」

「会長ですか?」

「うん…。しかも、交換生徒とずっと一緒にいるし。ボクと交換してほしいくらい…。」



萌黄は会長のことが好きなのか…。



「あんなに目ぇかけてあげてるのに、横の子しか見ないんだ。やだなぁ…」



ちらりと萌黄に目を向けると、苦しそうな顔をしている。
けれど、急に立ち上がると決意した顔で言った。



「よし、告白しよう!そうすれば絶対ボクのこと見てくれる!うん、そうしよう!さぁ、黄慈も行くよ。」

「…はい。」



行きたくはない。
だって会長の側には先輩がいる。

でも萌黄のためだから…。

僕は笑いかける萌黄に微笑む。



「あ、蒼ちゃん!」



中庭近くで会長を見つけ、萌黄はパタパタと駆けていく。
先輩がいないことにホッとする。
あと二日で交換生徒は終わるから、絶対に会わないようにしたい。



「萌黄君?どうしたんだい?」

「あのね、僕ね蒼ちゃんのことが好きなの!」



そう言った瞬間、会長の顔は嫌そうに一瞬だけ歪んだ。



「ありがとう。…でも、ごめんね。」



会長は僕をチラリと見た。
びくっとした。
だって、あの目は先輩と同じ目だったから。



「な、んで?」

「好きな人、いるんだ。やっと捕まえられる位置に来てくれたから…。一人になってくれたからさ。」



逃がしたくない。
今度は自分が捕まえる。
そう、目が語っていた。



「っ!何でっ?何でボクじゃないの!?蒼ちゃんのために色々してあげたのに!」

「萌黄君…」

「ボクが色々してあげたのに。親衛隊だってうざがると思ったから、潰してあげたのに…」



あぁ、あの小さな子たちのことかな?
僕が学園から逃がした子。
もう少しで壊れてしまうところだったから。



「蒼ちゃんが、ボクを見てくれないなら、ソイツも潰してやる!緑川翠なんて壊してやる!」



その叫びは僕の中でエコーする。
絶望のエコー。
僕は真っ暗闇に突き落とされたような感覚に陥った。



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あきゅろす。
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