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学園ノ噺


なんか、入学する場所間違えた気がしてきた。
前途多難すぎて、明日どころか今日すら見えないよ、父さん、母さん、凜太郎(柴犬)。



「ま、そうはいっても、ベクトル向けられるのは、顔のいい子ばかりだから大丈夫だよ。」

「そうですね。オレ、今日初めて平凡顔で生まれてきたことに感謝してますよ。」

「まぁ、可能性が0とは言えない所が難点だけどね。」

「えー…。」

「恋したら、相手のどんな顔も可愛く見えちゃうからね。」

「因みに寮監さんは?」

「あぁ。オレ、これでも外に彼女いるからね。ほら」



見せつけられた左薬指のリングがきらりと光り、俺には眩しかった。
おそらく、ペアリングだ。



「いいなぁ。」

「ふふ、いいでしょ。さて、君の同室者の話をしようか。」

「あ〜い。」



飲み終わった紅茶を淹れ直してもらった後、少し姿勢を正す。



「君の同室者の名前は、峰岸美季。別名、誘惑の天使。」

「何、その中二病的な名前。」

「ネーミングした人に言ってあげてよ。でも、あながち外れてないから怖いんだよね。」

「はぁ。」

「彼は、芸術の特待生なんだっていったよね。」

「はい。」

「彼が得意なのはダンス。洋でも和でも、幅広く全て突出して踊れる。その踊りときたら…」

「誘惑しているよう?」

「そう。で、タチの悪いことに、彼はそれを利用して近づく男を片っ端から食ってるんだ。」

「…つまり、」

「誘い込んで、セックス。」

「…それ、ただのヤリチンじゃん。」

「ちょっと違うかな。ビッチの方が正確。」



はい?ビッチって女に使うんじゃ?
それを抜きにしても、どこが天使なんだかさっぱりわからない。
第一、 オレの顔じゃ誘惑されないし、されたとしても興味ないからのらないだろう。



「ちなみに、彼、ノンケの子まで誘惑して食っちゃうから。」



…まさに魔性。
さっき見た人たちのどちらがそうなのかは知らないが、魔性が服を着て歩いているのと大差ないな。



「寮監さん、オレ、部屋変えたいです。」

「あー…それなんだけど、今、全室満員でね。外部生が豊作で、定員ぎりぎりまでいるんだよ。」

「交代したいって人いるんじゃないですか?その誑し込まれた人の中に。」

「それは、何度も誑し込まれた人に言われてるんだけど、誑し込んだ本人が『ただヤっただけで同室なんて迷惑。』って一蹴しちゃってね。」

「なんてやつだ…。」

「いい子だし、悪い子じゃないんだけど、性生活だけがね…。」

「爛れまくりですね。」

「…今日だけなら、泊まってってもいいよ。」

「ほ、ほんとですか!?」



うん、と頷いてくれる寮監さんが神様に見えた。

こういう人になら、ころっといっちゃうかもしれない。
そう考えたところで自己嫌悪に陥り、早くもこの学校に入学したことを後悔し始めていた。



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