学園ノ噺
4
翠先輩の部屋は、とてもシンプルだった。
一週間の交換生徒だからだろう。
一緒にご飯を食べて、お風呂に入って、現在リビングで先輩の勉強をみている。
「そう、それを微分して…」
「やった!できた!」
交換生徒として来ただけあって、飲み込みは早い。
最後の一問が解き終わり、グーッと伸びをする先輩に微笑めば急に真剣な顔になる。
「先輩?」
「っ!あぁもう!何でそんなにキュートなの!?」
「は?」
今度は先輩が微笑んで、僕の頬を撫でる。
「ねぇ、抱いていい?」
「…っ!」
「ふふ、顔真っ赤。ねぇ、返事欲しいな。」
「うぁ…」
どうしよう、どうしよう!
でも…。
考えていたら、携帯が鳴った。
「あ、ちょっとすみません。」
僕は携帯を持ってベランダへ行くと着信相手を見た。
「萌黄様?」
通話ボタンを押す。
「もしもし?」
『もしもし?あのね、明日帰れることになったから!』
「え?本当ですか?」
『うん。…やっぱり黄慈がいないと寂しくて。早く会いたいからすぐ帰るね。』
「…はい。待ってますよ。」
『うん。じゃあお休み!』
「お休みなさい。」
通話が切れ、僕は部屋に戻る。
明日には僕は先輩から離れなければ…。
いや、早ければ早いほどいい。
でも、苦しい…。
「黄慈君?」
心配そうな先輩の顔。
そんな顔しないで…。
そんな顔されたら、戻れなくなってしまう。
「せん、ぱ…」
苦しい、苦しいよ…。
「抱いて…」
するりと出た言葉。
それに先輩は満面の笑みとキスで応えてくれる。
「んは……んちゅ…う、……」
まともに息ができないほどの激しいキスは、それでもやはり優しかった。
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