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学園ノ噺
2

緑川さん改め、翠先輩は興奮すると何本かネジが外れるらしく、僕と出会って告白したあと、恥ずかしそうに謝ってきた。



「黄慈君、好きだよ。それは本当。」

「は、はぁ…。」



現在、昼休み。
先輩は僕の隣にいる。

あれから先輩は、恋人認定(友達からというのを軽くすっ飛ばした…)した僕にべったりだ。
何かと会長に理由付けて会長にべったりのふりをしてやって来る。

萌黄は今、本家のパーティーへ行ってしまい、三日間は学園にいない。
だからはっきり言って暇なのだ。
僕は本家に入ることが出来ないから…。



「黄慈君、今日、俺の部屋に泊まりに来ない?萌黄君がいないんじゃ暇でしょう?」

「でも、迷惑ですし…」

「迷惑じゃないよ。むしろ嬉しいな。」



翠先輩が不安そうな目で見てくる。

あぁ、先輩にそんな顔させたくない。



「わかりました。お邪魔しますね。でも邪魔だと思ったらすぐ追い出してください。」

「やった!」



先輩は嬉しそうに笑った。
僕の大好きな素敵な笑顔で…。

そこで気がついた。
今、自分は萌黄の笑顔より、先輩の笑顔を優先したことに。
しまったと思い、慌ててやはり断ろうと決めた。



「あ、の…やっぱり」

「嬉しいな。部屋に帰ったら何しよう?色んな話して、テレビ見て、一緒にお風呂入って、夕食食べて、それから…それから…」



けど、決心は呆気なく壊れてしまった。
とても嬉しそうな顔。
胸が熱くなる。
身体か熱くなる。
僕は気づいてしまった。

僕は先輩が好きだ…。

そう思えば、どんどん支配されていく気持ち。
幸せで膨らむ心。



「ごめんね、萌黄…」



僕はそっと謝った。
誰にも伝わらない、届かない声で…。

幸せな気持ちと比例するように罪悪感も募っていく。

ごめんね、萌黄。
でも、先輩が好きなんだ。
だから萌黄が帰ってくるまでの間だけでいい。
僕を先輩の恋人にさせて…。
萌黄が帰ってきたら、いつもの僕に戻るから。
萌黄だけの僕に戻るから。
…だから今だけは、どうか許して…。

お昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。



「じゃあ、放課後迎えに来るね!」

「はい、いってらっしゃい。」

「ふふ…行ってきます。」



先輩は立ち上がると機嫌良く、教室へ向かった。



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あきゅろす。
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