[携帯モード] [URL送信]

学園ノ噺
Hello and good bye

ねぇ、あなたはこの時代に生き別れってあると思う?
僕はまさに今、生き別れの片割れがいる学園に向かってる。

生き別れたのは赤ん坊の時。
古くからのしきたりで、双子は忌むべきものとされ、殺すくらいなら、と僕は分家に預けられた。
けれど僕らは大人の目を盗んでは遊んだ。
自分たちの血がお互いの繋がりを自然と教えてくれた。
まるで鏡のようにそっくりだからっていうのもあるけど。
だけど、大人たちは気づいた。
僕は海外に飛ばされ、片割れとは音信不通になった。



「金井様、学校に到着しました。」

「ありがとうございました。」



初老の運転手に礼を言い、トランクを持って門へ向かった。

ここ金城学園は、金井一族が創った学園だ。
本当は一応分家の出である僕が入れる学園じゃないが、従兄弟が僕を呼び寄せた。



「………城?」



呆気にとられるほどの重厚な門。
門の両側は森だ。
その奥にそびえ立つ城が校舎だろうか?
とにかく、門衛に編入証明書を見せて中へ入った。

風が吹いて長めの髪が暴れる。仕方なく髪を一つにまとめ、黙々と歩き、校舎に着いた。



「あれ?萌黄、君?」



校舎の入口に立っていた、光の加減で青く見える黒い髪の優しそうな美形。



「いえ。僕は金井黄慈といいます。よろしくお願いします。」

「あ、そっか。失礼しました。私は生徒会長の青野蒼といいます。では行きましょうか?」



とても優しそうな人。
でも精彩に欠けている。
よく見れば目の下に隈ができていた。



「会長、お体は大丈夫なんですか?」

「え?」

「僕なら行き方を教えてくれれば独りで行けますから。」

「しかし…」

「倒れる前に休むのも仕事ですよ。」



そう言えばフ、と笑って参ったな、と言いつつ行き方を教えると、去って行った。



「君は萌黄君とは、全く違うね。ありがとう。」



そんな言葉を残して…。

僕はいえ、と小さく応えて会長とは反対側へ歩きだした。

方向音痴ではないから、躊躇わずに歩く。
時々、何でこんなものが学園にあるんだ?とびっくりしつつ…。



[*前へ][次へ#]

3/22ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!