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chaosな日常
ヌケメン
俺は、トイレに入っている春を待っていた。
春は、トイレに幽霊がでるとか、ゴキブリがでるとかで1人でトイレに行けないヘタレだ。いつも、トイレに行くときは、大概俺を連れていく。とても面倒臭くて嫌だけど、春がしつこいので一緒に行ってやる。

ー長いな、確か個室に入ってたなあ、もしや、う○こか。


目の前に女子トイレから出てきた女子二人組が現れる。
場所を移そうと思った矢先ー。

「うわぁ、日向くんよ!日向くんかっこいい!なんか、日向くんが春と一緒にいるのって謎よねぇ。」

「分かる!春くん、変人だしテンション高いし、見た目変だし。なんか日向くんとタイプ違う。日向くん無理矢理仲良くさせられてんじゃないの。」

確かに、日向はアホで間抜けだ。でも、先入観で他人の友達の悪口を言うなよ。俺の中で何かが弾けた。
彼女たちは俺を横目で見ながら、笑いながら通りすぎようとする。

「無理矢理なんかじゃないー。春は馬鹿で変人で時によってキモいときもあるけど、いいとこもたくさんある。んなこと、言うなよ。」


俺は思わず言ってしまった。
女子二人組が目を点にしている。

あぁー。恥ずかしい。春を庇うなんて。
顔が熱い。

「そっそうだよね!日向くんって、友達思いで、優しい!さすが!ごめんね!」

二人は、謝って走っていった。

「あー、腹すっきりした。わりー。日向ごめんよ!俺、朝ちょっとガングロのバナナ食わされてよー。ちきしょー、バナナのやろー。あっ、べつに下ネタじゃないからなっ。」

春がトイレから出てきた。
さっきの女子の話聞いてないかな。あいつ、なにげに傷つきやすいから。

「んだよ、お前。俺のトイレの中のデスマッチの間中もリア充しやがって!女子と会話ですか。俺への当て付けか!このヌケメン!」

春がいつものようにうらやましそうに言う。なんだ、聞いてなかった。よかった。

「ヌケメンって、何だよ。春。」


「イケメンのくせしてどっか抜けてる奴だよっ!無意識にかっこいいこと言ってる奴!あんな好意もってる女子の前で友達庇ってんじゃねーよっ!このスッとこどっこい。
…でもありがとな。」


最後の春の一言はすごく小声だった。けど、嬉しくて。なんか、春こそヌケメンじゃないか。素直な春が少しかっこよく思えた。

なんか、恥ずかしくなった俺は言う。

「春、社会の窓が全開だ。」


「うそっ!?まじでぇぇ!」

さて、春の恥ずかしい窓が開いていたかは秘密だけどー。



俺たちはいつものように、ふざけながら廊下を並んで歩くのだった。






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