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創作小説
PROROGUE
This is the Story which curses the God of Desteny.
<コレハ運命ノ女神ヲ呪ッタ物語>


紅い髪と赤葡萄酒の瞳の旅人が丘の上で歌を紡ぐ。
運命の女神を讃える歌を。

小さな籠を持った少女が村を全速力で駆け抜ける。
中に入った葡萄の粒が2、3粒宙を舞った。
村外れにある父親の葡萄畑でもぎ取った新鮮な葡萄。
それを持って少女は村の反対側にある丘まで走った。
丘の上に辿り着くと、勢い良く仰向けに寝転がる。
風を身体で感じながら息を切らす。
特等席はいつも気持ちがいい。
季節の果物をもぎ取ってはいつもこの丘で村を眺めながら食べる。
少女はむくりと起き上がると、籠から葡萄を一房取り出して食べ始めた。
葡萄は甘酸っぱく、疲れた身体に染み渡っていく。
風を心地よく感じながらパクパクと葡萄を食べていると、風に乗って歌が聞こえてきた。
何処からだろうかとあたりを見渡すと、少女が来た方向から一人の少年が歩いてきた。
少年は丘の頂上、つまり少女のいる場所まで来ると、笑って軽く会釈した。
少年は格好から察すると、どうやら旅人らしい。
少女は葡萄を籠の中からもう一房出すと、少年にそれを差し出した。
「この季節は葡萄がとても美味しいんです。一房どうですか?」
少年は優しく笑って礼を言いながら受け取る。
少年の髪の色は薔薇のように深い紅色で、不思議な色だと思わず見とれていると、少年は笑った。
「この色が珍しい?」
少女は頷いて言葉を返す。
「見たことない色。でも、綺麗。」
ありがとう、と少年は言った。
心が穏やかになるような笑い方をする人だな、と思った。
「私はルーティス。貴方の名前は何?」
少年は困ったように頬を掻く。
「うーん…名前ねぇ。俺は旅から旅の根無し草だからな…いつも“旅人“としか名乗っていなかったんだよ。」
だから旅人って呼んでくれる?と少年は言った。
「そうなの?じゃあ旅人さん、どうして旅をしているの?」
ルーティスは旅人に名前が無いことには疑問を覚えずに、質問を続ける。
「探している人がいるんだよ」
少年はそう言うと、懐から一枚の写真を出した。
写真には白金の長髪に黄金の瞳の美しい女性が写っていた。
「フィンっていうんだけど…会ったこと無い?」
ルーティスは少し考えて首を振る。
旅人はがっくしと肩を落とす。
「またハズレか…」ルーティスは写真を返す。
それを受け取った旅人は、勢いよく立ち上がった。
「落ち込んでても仕方ないか!次行くぞ!」
ぐっと伸びをするとルーティスにお礼を言って後ろを向いた。
「じゃあね、ルーティス。またどこかで会ったら葡萄のお礼はさせてもらうよ。」
そのまま丘を降りていく旅人にルーティスは慌てて声をかけた。
「グーシオン!」
旅人は振り向く。
「私のパパが作ってる葡萄酒の名前。貴方の瞳と同じ色なの。だからもし、また会ったら、私は貴方をグーシオンと呼ぶわ!」
だから見間違えないでね。と笑いかける。
「そこまで言うなら見間違えるくらいの美人さんになってなよ。」
合い言葉が無駄にならないようにね、と旅人も笑い返した。


これが少年と少女の出逢い。
これが運命の女神により定められた出逢い。

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