創作小説 救世主3 翌日、一行は朝早くに宿を出ると、携帯食料を調達するために市場へやって来た。 朝早くというのに市場のあちこちからは元気な売り子の声が飛び交っており、明るい活気に溢れ返っている。 「平和だな」 ブライトは少し微笑みながらそんな市場の様子を眺める。 そんなブライトにアスカも頷いた。 「この平穏を……私達が守るんですよね」 アスカの声色から、その言葉が不安や恐怖からではなく、誇りと希望から紡がれているのが分かった。 ブライトはそんなアスカを頼もしく思った。 「油も薬草も……大体手に入れたわよ〜!」 市場で別行動していたエルザとリュウガが、二人を見つけて駆け寄ってきた。 「こっちも食料は手に入れました」 アスカがそう言って手に持っていた袋を掲げる。 「それじゃあ行こうか」 ブライトはそう言って、町の西を指差した。 町外れまで歩いていくと、あっという間に辺りは木々で覆われる。 流石は『魔法と緑の国』と呼ばれるだけはある、とブライトは木々を見上げた。 「じゃあ昨日言った通り、国立図書館に向かうとするか」 リュウガは懐から軍支給の魔法地図を取り出した。 「ここから一番近い図書館はナリシア軍事図書館だ。軍事用だから蔵書の数も多い。そこで良いか?」 リュウガは地図から顔を上げ、ブライトに尋ねる。 ブライトも、軍勤めのリュウガに任せれば問題はないだろうと判断して頷いた。 「じゃあ軍事図書館へ……」 そう言って進行方向へ目を向けたリュウガはそのまま固まった。 「どうしたのよ、リュウ…ガ……」 それを不審に思い、リュウガの視線を追った他三人も固まってしまう。 三人の視線の先には、旅人風の姿をした一人の少年がいた。 [*前へ][次へ#] [戻る] |