堕ちて混ざって笑いましょう
『もしも』
しばらく歩いているうちに、次々とデビルバッツのメンバーは別れ、遂にツナと世話係の五人になった。
「とりあえず今日はうちに来ると良いよ。許可取れたし」
つい先程まで自宅に電話していたセナは、携帯を閉じてツナにそう言った。ツナはその有難い申し出に素直に頷く。
「本当にすみません」
そう言って謝るツナにセナは大丈夫だよ、と笑う。
そんな二人を眺めていた十文字が唐突に口を開いた。
「……なんか……二人が並んでると兄弟みてーだな」
なんとなく似てるし……
そう言う十文字にツナとセナはお互い顔を見合わせる。
「「……そう?」」
同じ様に顔を見合わせ、同じ様に首をかしげる二人の様子はますます兄弟を思わせる。
思わずまもりは小さく笑った。
「頑張ってね、セナお兄ちゃん」
そう言ってセナに優しく微笑むまもりに、この二人こそ姉弟みたいだとツナは思った。
「困ったことあったら連絡するのよ」
そう言ってまもりは自分の帰路につく。それを皮切りに十文字とムサシもそれぞれ自分の家に向かって歩いていった。
「仲良いんですね」
ツナはまもりが歩いていった方を見ながらセナに言った。
「まもり姉ちゃんとは幼なじみなんだ」
セナの言葉にツナは納得したように頷く。ならば先程姉弟に見えたのも当然と言うものだ。幼なじみだと言うなら姉弟も同然に過ごしてきたのだろうから。
(幼なじみ……かあ)
そういえばボンゴレ初代は幼なじみであるGとボンゴレを立ち上げたと言うことを思い出す。
ツナにはセナのように幼なじみはいない。
というより、中学一年生になるまで友達という友達は居なかった。
それに一人っ子でもあるため、幼い頃から時を共にした存在は両親を除いては誰も存在しない。
(俺にもそういう人が側にいたら何か変わったのかな……)
一瞬脳裏に浮かんだどうしようもない妄想をすぐに振り払う。
『もしも』なんて考えても仕方ない。
(キツい……な……)
少し前までは自分を信じてくれる人をこんな風に欲する事などなかったのに。
そんなことを考えていたからだろうか。
セナが足を止めていることにすぐ気付けなかったのは。
「……綱吉くん」
ツナは後ろからセナに声をかけられてハッとする。
「あ、すみません!ぼんやりしてて……」
ツナは慌ててセナのもとまで戻るとすぐに謝った。セナはツナに優しく首を振る。
「着いたよ」
セナはそう言って目の前にある家を指差した。それはツナが住んでいる家と同じような、一般的な二階建ての一軒家。
家を見上げていたツナは玄関の方へ歩いていくセナに気づいて慌てて後を追う。
「ただいまー」
セナが玄関のドアを開けて家に入ると、奥から誰かが出てくるのが聞こえた。
「あら、おかえりなさい」
エプロン着ておたま片手に奥から現れたのは、セナと同じ髪色をしたセナの母親だった。
「あなたが沢田綱吉くん?」
セナの母はツナに軽く会釈しながら尋ねる。
「え、あ、そうです」
お世話になります、と慌ててツナも会釈を返す。
「何もおもてなしできないけど、ゆっくりしていってね」
そう言って優しく微笑むとセナの母は台所の方へ戻っていった。
「とりあえず、先に部屋行こうか」
セナは自分の部屋のある二階を指差した。ツナはそれに素直に頷くと、セナの後ろをついて階段を上っていった。
「ここが僕の部屋だよ」
そう言われて入った部屋は、やはりツナの部屋と同じくらいの広さの部屋で、しかしツナの部屋とは違いキチンと片付いていた。
「ここに布団二枚引いて寝るからね」
「色々迷惑かけてすみません……本当にありがとうございます」
そう言って頭を下げるツナにセナは母と同じ様に優しく微笑む。
「誰も迷惑だなんて思ってないよ。だから……もっと楽にして良いんだよ?」
ツナはセナの言葉に胸に熱いものが込み上げながらも、もう一度お礼を言った。
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