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堕ちて混ざって笑いましょう


自分は自他認める世界最高峰のヒットマンだ。

これまで数々の死地を潜り抜け、数々の任務を成功させててきた。

そんな自分にとって、人の気配を読むなど呼吸をするようなもの。


だからこそ、愕然とした。

自分がいつの間にか背後をとられていたと言う事実に

それも戦闘の『せ』の字も知らなそうな、こんな女に………


動揺したのは一瞬で、すぐにリボーンは感情をポーカーフェイスの下に隠すと、女に向き直り口元に軽い笑みを浮かべた。

「チャオっす」

女からの挨拶にリボーンは自分流の挨拶を返す。そしてひょいと垣根の上に飛び乗ると、女と目線を合わせた。

「いつからそこにいたんだ?全然気付かなかったゾ」

軽い調子で尋ねるものの、リボーンの目には探るような色が見える。それを分かってか分からずか、女は笑みを深める。

「いつから……と言われたら、貴方の振り向く直前かしらね」

女のその言葉にリボーンは、からかわれていると感じる。しかしリボーンにとってそんなことは初めてではなかった。この姿になってからと言うもの、いつだって人は見かけで判断してきた。

「さっきまで俺の周りに人はいないと思ってたんだが……どこから現れたんだ?」

だからリボーンはからかわれたことに苛立つことなく、現状を理解するために情報を聞き出そうとする。

「あら、私はここから出てきたのよ」

女はその白魚のように白い指を、空き地に向けた。

そこでリボーンは違和感に気づいた。

リボーンは読心術を会得している。大概の嘘ならば見抜くことが出来る。

しかし、リボーンには相手が嘘を言っているようには思えなかった。相手は自分をからかっているものの、嘘は言っていない。

リボーンはもう一度空き地に目を向ける。

しかしそこには雑草の生える荒れた地が広がるばかりで、隠れられる場所も見つからない。四方は黒い木製の塀に囲まれ、どこかから通り抜け出来る様子はない。かろうじて奥に崩れかけた井戸が見えるが、まさかあそこから出てきたとは考えにくい。

考え込むリボーンに女はクスリと囀ずるように笑うと、数歩近づき、リボーンの耳元に囁いた。

「昼の空に星が輝かないのと同じ……目に見えることだけが真実とは限らないものよ」

女の言葉にどういう意味だと問いただそうとして、リボーンは茫然とした。

それまでリボーンと話していたはずの女の姿は忽然と消えていた。

「どうなってやがる……」

我に返ったリボーンは、とっさに空き地へと目を向けたが、やはり空き地には何もないままだった。


その後リボーンは空き地を中心にその女を探して回ってみたが、どんなに探しても彼女の影すら掴むことはできなかった
。また、当初の目的であったツナのバイト先らしき店も見付からず、リボーンは日が落ちるのを合図に来た道を引き返すことにした。




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