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堕ちて混ざって笑いましょう
二律背反

「出会って間もない俺達を信じれないのは仕方ない。でもな、どうしても家に帰りたくないっつうんだったらとりあえず俺達を利用しとけ」

どうせ俺達は現在進行形でヒル魔の野郎に利用されてるしな。

そう言うとムサシはツナから視線をそらし、ヒル魔の出ていったドアの方を見た。

一方ツナはムサシの言葉に揺れていた。


『利用』


そんな相手を道具のように考えるやり方に抵抗を感じる一方で、それなら相手を信じなくて良い、と胸が軽くなる。

いよいよどうすれば良いのか、正解は何なのか分からなくなり、ツナは混乱し始める。

そんなツナにまもりも後ろから呼びかける。

「ずっとここにいろなんて言わないし、出ていけとも絶対言わないから……だから……だからせめて具合が良くなるまでは……」

そんなまもりの暖かさが、揺れているツナを後押しした。


―――そしてツナは悪魔への最後の一歩を踏み出す。


ツナは少し逡巡した後、ゆっくりと頷いた。

「えっと……その……お世話になります……」

そう言ってお辞儀をするツナにまもりは安堵し、笑顔を浮かべた。

よく状況を理解していなかった他の面々も、とりあえず良い結果に終わった事を悟り、息を抜いて笑い合う。


「なんかよくわかんねーが、とりあえずよろしくな」

「よろしくね、綱吉くん」

世話係に任命された十文字とセナがツナに声をかける。

ツナはこれで良かったのか自分でも分からないまま二人に返事をしていた。


「ま、結局アレだろ?綱吉は家出中で、ヒル魔の野郎がそれを保護した……みたいな感じだろ?」

黒木が頭をフル回転させて現状を理解しようとする。

「……保護……これほどヤツに似合わねえ言葉はねえな……」

誘拐したって方がむしろ納得できる、と戸叶が大真面目な表情で呟く。実際過去にヒル魔に誘拐されたことがあるモン太はその言葉に頷いていた。

「いやいや、そもそも綱吉くん連れてきたのはまもり姉ちゃんだから」

セナが手を横に振りながら二人にツッコミを入れる。

和気あいあいと賑やかに笑い合うデビルバッツの面々に、ツナも肩に入っていた力を抜く。

そして心の中ではこれからの事を考えていた。

(これから……どうなるのかな)

ツナは書き置きも何もせずに家を飛び出していた。

だが、恐らく奈々達が自分の家出に気付くまでにはまだ時間があるだろう。

何故なら、ツナの家にいる面々は今誰一人ツナに関心を持っていないからだ。

最近ではツナが居ようと居まいと関わらず、存在しないように振る舞っている彼らの事だから、自分の家出に気付くのはしばらく先のことだろう。

気付かれていない内は良いのだ。

気付かれていない内は、安心なのだ。

しかし気付かれたら?

彼等が自分の家出に気付いてしまったら?

きっと探しに来るのだろう。

きっと連れ戻しに来るのだろう。

ツナはそこまで考えると勢い良く首を振った。

(今は……考えるのをやめよう……)

それでなくともツナの心は疲れていた。

泥門で起きたこと……ではなく、並盛での日々のせいで。

だから今はこれ以上疲れることをしたくはなかった。

「さ、遅くなる前に解散しましょう」

まもりの言葉に顔をあげたツナは、デビルバッツ面々の後ろについて、泥門高校を後にした。



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