堕ちて混ざって笑いましょう
不在
男の子二人と女の子が遊んでいる。積み木をし、お絵描きをし、テレビを見て、双六を転がす。
三人とも一見楽しげに遊んでいたが、その表情はどこか暗かった。
やがて小さい男の子が頬を膨らませて手を止める。
「ねぇフゥ太」
フゥ太と呼ばれた少年は顔をあげた。少年がどうしたの、と尋ねれば、男の子は俯いたまま口を開く。
「ランボさんつまんない」
フゥ太は悲しげな表情で手を止めた。
「あ……じゃあ、違うことしよっか」
出していたおもちゃをおもちゃ箱に仕舞い、何が良いかと中を漁る。しかしランボと自分を呼んだ男の子はゆるゆると首を振った。
「ランボさん、ツナと遊びたい」
すると今度は女の子も口を開いた。
「イーピンも、ツナさんと遊びたい」
フゥ太は困ったように、そして悲しそうに眉をハの字にした。
まだ幼い二人はファミリーの間に何があったのか知らない。フゥ太はツナを好いている二人の耳に今回の事が入ってこないようリボーンや獄寺達にお願いしていたのだ。
しかしもう二人の不満は誤魔化せないところまできていた。二人は黙ったままのフゥ太に詰め寄る。
「ツナどこぉ?もうツナ見えないふりするの飽きたぁ」
「ツナさん最近見てない。イーピン心配」
今にも泣き出しそうな二人にフゥ太も泣きそうになる。
「僕だってツナ兄と遊びたいよ……」
すると、フゥ太ではラチが明かないと思ったのか、ランボはキッチンへと駆け出した。慌ててフゥ太は止めようとするが、間に合わず、ランボは料理をしていた奈々に飛び付く。
「ママーン!」
半泣きで飛び付いてきたランボに、奈々は持っていた野菜を置いてランボを抱き上げる。
「あらあらどうしたの?イーピンちゃん達と喧嘩でもしちゃった?」
ランボは奈々の胸に顔を埋めたまま首を振る。
「ツナどこぉ?ランボさん遊びたいぃ!!」
一瞬、奈々の表情が固まった。しかし奈々はすぐに笑顔を取り戻すと、ランボの頭を撫でる。
「ツッ君はね、今学校よ?お勉強しに行ってるの」
いつも行ってるでしょ?と笑みを浮かべてランボを宥める奈々の元にイーピンは駆け寄ると、スカートの裾を掴み首を振った。
「今日ツナさん学校違う」
イーピンの言葉に奈々は「え?」と声をあげる。
「今日土曜日。学校ない」
奈々は一瞬何を言われたのか分からないといった顔をした。そして冷蔵庫に貼ってあるカレンダーを見る。確かに今日は土曜日で、休日登校の日でもなかった。
「え……あ、あら……そうだったわね。今日は土曜日……学校はない……」
顔を蒼白にして呟く奈々に追い討ちをかけるようにランボは泣き出す。
「最近ツナさん見てない。ツナさんどこ?」
イーピンも掴んでいたスカートの裾を離し、涙でにじむ目をこする。
そんな二人の元にフゥ太と、騒ぎを聞き付けたビアンキが寄ってきた。
フゥ太がランボを、ビアンキがイーピンを抱き上げて二人をあやす。
「ツナはちょっと出かけてるのよ。すぐ帰ってくるわ」
ビアンキは優しく声をかける。その場しのぎでしかないが、その言葉に段々と二人は落ち着いていった。
泣き付かれたのか二人はそのままフゥ太とビアンキの腕の中で寝息をたて始める。そんな二人に安堵の息を吐いたビアンキに、奈々は真っ青な顔で話しかけた。
「本当に、出掛けているだけよね」
そんな奈々を安心させるように笑みを浮かべた。
「きっとリボーンが『根性叩き直す』って言って勉強合宿でも開いてるのよ。心配いらないわ」
ビアンキの言葉に不安げに瞳を揺らしながらも、奈々は小さく頷いた。
偽りの平穏は、少しずつ綻び始めていた。
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