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堕ちて混ざって笑いましょう
見舞いとお土産

翌日も、その翌日も、セナの家にはデビルバッツのメンバーが代わる代わるツナの見舞いに訪れた。


ツナが泥門に来て4日目の夕方にはモン太、小結、瀧、鈴菜の四人がツナの見舞いに来た。

「やー!君が沢田綱吉君?あたし瀧鈴音!この馬鹿兄の妹でデビルバッツのチアリーダーなの!よろしくー」

鈴音は活発に腕を振り上げながら自己紹介をする。そして握手を求めるように右手を差し出した。

「よ、よろしく」

若干気圧されながらも、ツナは差し出された手を握り返した。

「バナナ持ってきたから、これ食って元気になれよ」

モン太は来る途中に買ってきたバナナを渡す。

「アハーハー!大丈夫、僕のサインをあげるよ!これで元気百倍さ!」

瀧は自分のサインを書いた色紙を差し出す。ツナは素直に受け取るが、隣から鈴音が「サインで元気になれたら世話ないでしょ」と瀧の頭をはたいた。

「フゴッ!オススメ!」

小結は彼のオススメというスポ根映画のDVDを持ってきていた。それは周りで評判が良かったもののツナはまだ見ていなかったもので、お礼を良いながらツナは嬉しそうに受け取る。そんなツナの両側からセナと鈴音が手元を覗き込む。

「やー、あたしコレ知ってる!」

「僕も見たかったんだ〜!」

「じゃあよ、せっかくだしみんなで見よーぜ!」

勝手知ったると言わんばかりに、モン太はセナの部屋のDVDプレイヤーを起動する。

一同はモン太のバナナを食べながらセナの部屋のテレビでDVDを見ていた。

「うおっ、すげぇ!」

「負けんなっ」

「アハーハー!これくらい僕だってできるさ!」

「兄さん、ちょっと黙って」

映画の内容に一喜一憂しながらも、一同はテレビに釘付けになる。最後には感情豊かなモン太は涙目となって鼻をかんでいた。

映画が終わった頃、丁度外も暗くなり、四人は誰からともなく帰りの支度を始める。

「じゃあまたな、綱吉」

「フゴッ!」

「アハーハ今度は僕の活躍を収録したビデオを持ってくるよ」

「恥ずかしいからやめて兄さん。じゃあね、ヨッシー!」

終わってみれば、常にデビルバッツのペースで、まるで嵐のような見舞いだった。

だがキャラは濃いものの鈴音を除く三人が単純脳だったからか、精神年齢が近いからか、ツナはあまり気負うことなく四人と過ごせた。


その翌日は雪光と栗田がツナを訪ねた。

「調子どう?お見舞い持ってきたから、これ食べて元気になってね」

そう言って栗田は果物の詰まった大きなバスケットを差し出す。ツナはどこか申し訳なさげにお礼を言いながらそれを受け取る。両手にかかるずっしりとした重みにツナが少しよろけると、両脇からその肩をセナと雪光が支えた。

「後で母さんに頼んで切って貰おうか」

そう言って笑うセナにツナはコクコクと頷く。

「すっかりお兄さんだね」

そんな二人の様子を見て、雪光は微笑ましげに呟く。そんな雪光にセナは音がするのではと思うほどの光速で首を振った。

「いやいやいや僕なんてもう全然……!」

相変わらずのセナに雪光と栗田は笑う。

セナのあまりの反応に一瞬キョトンとしていたツナも、段々と息が抜けたような笑みを浮かべた。

「あ、そうだ」

セナは何かを思い出したように呟き、ピタリと動きを止める。そしてツナの方を向いた。

「学校休んでる間もし勉強が不安だったら、僕じゃなくて雪さんかまもり姉ちゃんに聞いてね。二人とも、すごく頭良いし教えるのも上手だから」

雪光はセナのべた褒めに少し照れたように笑う。対するツナは、勉強という単語に苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

それからは栗田の持ってきた果物をセナ母にいくつか切り分けてもらって、それをみんなで食べる。

「アメフトってホントに楽しいんだよ!元気になったら練習を見においでよ!!」

そう言って栗田がアメフトの良さをツナに語る。ツナは楽しげに、しかし時折アメフトの凶暴性に怯えながら、栗田の話を聞いて時間を過ごした。


あっという間に外は暗くなり、栗田と雪光は帰りの準備を始めた。

「じゃあね綱吉君」

いち早く準備を終えた栗田が、ツナに挨拶する。ツナもお辞儀をして見舞いのお礼を言う。「果物おいしかったです」と言うと、栗田は満足そうに笑った。

「またね、綱吉君。練習来てくれるの楽しみにしてるから」

雪光の言葉にツナは笑って頷き、「俺も楽しみにしてます」と応えた。

「じゃあ、二人を駅まで送ってくるね」

あまりセナの家に来たことがない栗田と雪光のために今日は駅まで送ることになっていた。

「いってらっしゃい、セナさん」

「うん、行ってきます」


泥門に来てから5日目。

暖かい、安心できる場所を得たツナの顔色は段々と良くなってきており、また表情も最初の怯えた様子から一転し、穏やかな笑みを浮かべるようになっていた。

本来の、大空を冠するに相応しいツナが、ゆっくりと姿を表していた。

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