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堕ちて混ざって笑いましょう


通学路を逸れてからは、まるで進む道を知っているかのように、自然に足が動いた。

商店街から遠ざかるに連れて住宅街にさしかかり、だんだんと人気も寂しくなってくる。

歩いていく内に気が付けば、道を行く者は己以外にいなくなっていた。

住宅街であるからには当然人が住んでいるはずなのだが、家からも路地からも、まるで人の気配を感じられない。まるでハリボテの街に迷い込んだかのような気にさえさせられる。

こんな人気のない場所にバイトできる場所なんてあるのか、道を間違えたのでは、と疑問に思いながらもリボーンは足取りを止めなかった。


商店街から十分程歩いたとき、不意に住宅街にぽっかりと空いた『空き地』が目に入る。


リボーンはその空き地に違和感を持ち、歩みを止めてじっくりと眺めた。

黒い柵に仕切られたその空き地は一軒家を建てるには充分すぎる広さを有し、それでいて中はただ雑草の生える荒れ地が広がるだけだった。

家の土台や廃材は一切見当たらず、かろうじて残っている門の構えや月の装飾から、洋式の家が建っていただろうことだけが分かる。

空き地に貼られている土地の買い取りや借用を募集するポスターも貼られていない。この土地の持ち主は、この場所を誰にも使わせるつもりがないという事なのだろう。そう思うと、普段は傍若無人なリボーンも、この空き地に足を踏み入れることが躊躇われた。

リボーンはそれまでじっと眺めていた空き地から目をそらす。そして空き地の門に背を向け、再び足を進めた。否、進めるはずだった。


突然背後に現れたその『気配』さえ無ければ。


素早く振り返ると、空き地の門の前に真っ赤な服に身を包んだ黒髪の女が立っていた。

「あら、こんにちは」

深く笑んだその女の笑みは、息を飲むほどに美しく、そしてゾッとするほどに艶やかだった。


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あきゅろす。
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