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堕ちて混ざって笑いましょう


夢の中の空は、いつだって現実のそれよりも澄んでいた。


ユメウツツ2


しばらく懸命に手裏剣の練習をやっていた乱きりしんの三人だったが、空が赤らんで来た頃から段々と疲れを見せ始めた。慣れていないと手裏剣を投げる動作は意外と疲れるのだ。

「今日のところはこれくらいで良いだろ」

良い頃合いだと思い三人に声をかけると、「は〜い」とも「へ〜い」ともつかない気の抜けたような返事が返ってきた。

「練習見てくださってありがとうございました〜」

乱太郎が優しそうな笑顔でお礼を言う。そんな乱太郎に「別に大したことしてねーよ」と肩をすくめた。

「ほら、腹減ったろ?三人とも食堂行くぞ」

『食堂』の単語に一番へたれこんでいたしんべヱがピクリと反応した。それに追い討ちをかけるかのように言葉を続ける。

「今日のAランチは唐揚げだったか?うめーんだよな、おばちゃんの唐揚げ」

直後、それまでの疲れはどこに消えたのか……と疑問に思うほどの早さでしんべヱは食堂へと走っていった。そんなしんべヱに乱太郎ときり丸と顔を見合わせて思わず呆れたような可笑しそうな顔で笑い合う。

「待ってよしんべヱ!」
「俺らを置いてくなよな」

乱太郎ときり丸の二人はそう言って走るしんべヱを追いかけていった。


また一人になった俺は、何となしに空を見上げる。すると、唐突に抗いがたい睡魔が襲ってきた。

(あ〜……今日はここまでか)

ぐらりと歪む空や地面に顔をしかめる。空が地面に溶け込み、緑やら赤やら茶色が混ざりあい、視界はだんだん暗くなる。同時に、まるで混ざりあった色の中に沈んでいくかのように意識がだんだん遠ざかる。

(おばちゃんの唐揚げはまた今度だな……)

そこまで考えたところで、俺は完全に夢から『堕ちた』。



次に目を開いた先に見えたのは、いつもと変わらない少しくすんだ空だった。

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あきゅろす。
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