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堕ちて混ざって笑いましょう
電話

規則的な着信音。

それを聞いた雲雀は学ランの内ポケットから黒の携帯を取り出した。それは、雲雀のプライベート用の携帯。

「……」

携帯を開き、画面を見た雲雀はわずかに眉間にシワを寄せた。着信を知らせる画面には『非通知』の文字。

雲雀は少しムッとしながらも、戸惑わずに通話ボタンを押し耳にあてがった。

「誰?」

不機嫌を色濃く見せた声色が、応接間に響く。そんな雲雀の声に怖じ気づくことなく問いに間髪入れずに答えたのは、雲雀のよく聞き知った声だった。

『俺だ』

雲雀は声を聞いて更に期限を急降下させる。

「貴方に僕のプライベートナンバー、教えた覚えないんだけど」

低く呟かれた言葉と溢れるように発せられた殺気に、さすがの草壁も体を緊張させる。しかし電話口の男はよほど怖いもの知らずなのか、雲雀の言葉を笑い飛ばした。

『そりゃ教えてもらってねぇからナァ』

さも当然のように笑う電話口の相手に雲雀は眉間にシワを寄せたまま、しかしどこか諦めたようにため息をついた。

「どうやって……なんて聞くだけ無駄だよね、ヒル魔?」

尋ねるように聞く。相手は―――ヒル魔は軽く笑いながらすぐに答えを返した。

『んなもん、分かってんだろ―――雲雀?』

雲雀はもう一度軽くため息を吐いた。

「とりあえず君がハッキングしただろう僕のパソコンは、セキュリティ会社を咬み殺すとして……一体何の用?もしつまらないことなら君も咬み殺すよ?」

雲雀の物騒な発言に、ヒル魔はケケケと笑う。

『お前んとこの沢田綱吉のことだ』

突然出された、思ってもみなかった名前に、雲雀は軽く目を見開く。ヒル魔は雲雀にお構い無しに言葉を続けた。

『今日無断欠席してるだろ?こっちに来てる』

雲雀は開いた瞳を薄く細め、「へぇ」と言葉を漏らす。

「理由は『アリサ・テール』かい?」

雲雀は、最近転校してきた少女の名前を挙げた。するとヒル魔から肯定の言葉が返ってくる。

『っつーことでテメェも一枚噛めよ。どうせ最近退屈なんだろ?』

ヒル魔の言葉に、雲雀は軽く眉を寄せた。

「どうして君がそんなこと知ってるのさ」

しかしヒル魔は笑うだけで雲雀の問いには答えない。ヒル魔の性格を知る雲雀は、その様子に聞いても無意味だと判断し、「まぁいいや」と早々に話を切り替えた。

「乗るよ、その話。君の言う通り……最近、つまらなかったからね」




ヒル魔との電話を終えた雲雀は、携帯を閉じる。その表情はどこか楽しそうで、心なしか携帯を仕舞う手付きも軽い。

雲雀はデスクにノートパソコンを出すと、慣れた手つきでそれを弄った

「ああ、この経路から侵入したんだ」

そこにはヒル魔がどういった経路で雲雀のプライバシーシステムまで侵入したかの足跡が表示されていた。雲雀はその足跡を逆算して追ってみる。しかしいくら追っても最終的にたどり着くのは自分のパソコンで、ヒル魔のパソコンをハッキング仕返してやることはできなかった。

何重にも仕掛けられたセキュリティシステムのその小さな隙をくぐるように侵入してきた上、自分のパソコンを逆算されないようしっかり足跡を改竄しているヒル魔に、雲雀は「さすがだね」と呟く。そこには、『つまらない』と言って不機嫌オーラを放っていた雲雀はどこにもいない。

雲雀はヒル魔の侵入経路を示したデータを保存すると、各セキュリティ会社へのメールに添付する。そして本文に『即刻改善しないと咬み殺す』と記入すると、一斉送信で送りつけた。

「使えないセキュリティ会社の社員達を咬み殺してしまおうかとも思ったけど……まぁいいや。楽しそうな話を持ってきたヒル魔に免じて、見逃してあげるよ」


雲雀のその言葉に、草壁は人からは分からない程度に安堵の息を着く。各技術者の入院による日本中のセキュリティシステムのダウンという最悪の明日は回避されたらしい。


その頃、雲雀からのメールを開いたセキュリティ会社の社員達は、大慌てでセキュリティの改善を始めつつ、雲雀からの制裁を恐れて顔を青くしていた。

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あきゅろす。
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