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堕ちて混ざって笑いましょう


鎖は、山本の腕に巻き付くように繋がっている。

(なに……これ?)

ツナはその鎖に戸惑いながらも手を伸ばす。指の先が鎖に触れた途端、ツナの頭に『声』が響いた。


『一年レギュラーのくせに何が挫折だよ』

『みんなしてアイツばっかり』

『ダメツナ余計なことしやがって……』


頭の中に響くその声に、ツナは覚えがあった。

ツナはクラスメート達を振り返る。

そしてその中に、山本腕から延びる鎖と繋がっている人達を見つけた。

(……野球部の……みんな……?)

鎖と繋がっていたのは、山本と同じく野球部に所属するメンバーだった。

彼らは一様に笑い合い、山本が生きる意思を見せたことを喜んでいる。

その顔からは先程の声の示すような感情は欠片も伺えない。

しかし鎖に触れるツナの頭には、彼等と同じ声が『悪意』を叫び続けていた。

『良いよな、天才は』

『死んでも良かったのに』

冷たい悪意の言葉にツナはブルリと体を震わせた。

そんなツナの隣では、山本がフェンスを乗り越えようとフェンスに手をかけていた。

そのまま片手で体重を支えると、山本はフェンスの縁に足をかける。

その時、幾重にも重なる声が強くツナの頭に響いた。


『『『今、フェンスが折れたら良いのに』』』


声に応えるように、山本の右腕に絡み付いていた鎖が腕から離れ、フェンスへと移動する。そしてフェンスに絡み付くと、鎖はフェンスを強く締め上げた。

山本の体重と鎖からの圧迫の両方を受けたフェンスは嫌な音をたてて軋む。

「やまっ……!」

気が付くとツナは腕を伸ばしていた。真っ直ぐに伸ばされた手は吸い込まれるように山本へと向かう。

しかし同時にパキリと何かが割れるような音が響いた。

みんなが見つめる中、山本がフェンスに乗ったままぐらりと傾き、目録を外したツナの腕は宙を掴む。


誰かが息を飲んだ音がした。


誰かの悲鳴が木霊した。


それらを背に受けながら、ツナはゆっくりと離れていく山本に向かって駆け出した。


「山本……!!」


割れたフェンスに投げ出され、宙に浮かぶ山本の腕を今度こそ掴む。

しかしすでに屋上から飛び出していた体は重力に従って真っ直ぐに下に落ちた。

自分より一回りは大きい山本を支える力は当然ツナにはなく、引かれるようにツナも屋上を飛び出す。

つんざくような悲鳴を聞きながら、二人は落ちた。


「今こそ死ぬ気になる時だぞ」


不意にツナの耳に届いたのは、疫病神の囁きと銃声だった。




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あきゅろす。
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