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堕ちて混ざって笑いましょう
くじ引き
「あ゛ー、つっかれたー」

「マジ蛭魔容赦ねー!」

「アイツ3年になっても引退する気ねぇだろ」

「「もう一回クリスマスボールってか?」」

体育倉庫に練習道具を片付けた十文字、黒木、戸叶の三人が軽口を叩きながら部室に入ってきた。

それにより部室の気まずい空気が一瞬で吹き飛ぶ。

「お腹空いた〜。小結君、この後来々軒寄らない?スペシャルメニューやってるらしいし」

「フゴッ!」

「……来々軒潰す気か……?」

「その手のキャンペーンに栗田くんが行ったら冗談じゃすまないもんね」

「アハーハー!ボクだってそれくらいペロリさ!」

それに続いてデビルバッツのメンバーが次々に部室に入る。

まもりは慌てて立ち上がるとメンバーにタオルや飲み物を渡していった。

それを受け取った面々は泥や汗を拭きながら水分補給をする。

そして一人二人と奥の更衣室の方へ入っていった。


それぞれがユニフォームを脱ぎ捨て、Tシャツや制服に着替え終わった頃、突如勢いよく部室の引き戸が開いた。

「おーおー糞ガキ共、まだ全員残ってんな」
部室の扉を足で蹴り開けた蛭魔は、部室の中にいる面々を見る。

その中でツナの姿を確認した蛭魔は口端を悪魔のように歪めた。

それを見たデビルバッツのメンバーは嫌な予感にギクリと体を強張らせる。

試合や練習の時によく見るあの顔は……

「何か……企んでる!」

「ぜってー何か企んでる!」

「ありゃぜってーロクでもねえこと企んでる!!」

十文字達は顔をひきつらせ、デビルバッツ全員の思ったことを口にした。

蛭魔は何処からともなくカードを取り出した。

それを素早くシャッフルすると机に広げる。

「今からこいつを一枚引きやがれ」

ケケケと笑いながら言うその姿はまさに悪魔。

そんな蛭魔の様子にその場にいるツナ以外の人間が『絶対引きたくない』という想いを全力で顔面に表す。

それを見た蛭魔は楽しそうに歪められた唇の端を更に持ち上げる。


「因みに引かなかった奴は明日地獄の特訓プレゼント」


蛭魔の言葉に一斉に全員がカードに手を伸ばした。

蛭魔の特訓はただでさえ地獄なのだ。その蛭魔が『地獄』と称す特訓など、どこまで外道なのか想像することすら憚れる。

こうなれば運に全てを任せるまで。

そう決意したデビルバッツのメンバーは自分の取ったカードを恐る恐る覗く。


「ん?白紙……?」

自分のカードを確認したモン太が拍子抜けした表情で呟く。

「俺も白紙だ」

戸叶が疑わしげな表情で白紙のカードをペラペラと振ったり透かしたりしている。

「俺もだ。これってセーフ?」

その隣で黒木は嬉しそうに笑う。

「僕も白紙」

「フゴ!」

「アハーハー!ボクもだよ!」

栗田と小結、瀧が自分のカードを見ながらそれぞれマイペースな反応を表す。

「僕も白紙。セナ君は?」

雪光は自分の隣にいたセナを振り返る。

そこには顔から血の引いたセナが呆然と立ち尽くしている。

それを見たモン太と黒木は一度互いに顔を見合わせ、そっとセナの背後まで寄っていった。

「ドンマイ、セナ」

「ま、そういうこともあるさ」

そう言うとそれぞれ左右の肩を慰めるように叩く。

「ひいいいいいい!!」

何を想像したのかセナは頭を抱え、涙目で悲鳴をあげた。


そんな面々を横目に戸叶は一言も声を発しない十文字の方を見る。十文字の眉間には深々とシワが刻まれており、良くない結果を引いたのは明らかだった。

確認のため、と思い戸叶は後ろからカードを覗き込む。

やはり予想通り、カードには『当たり』の文字があった。

「……運がなかったな」

渋く顔をしかめた戸叶は十文字の肩に手を置いて黒木達同様に十文字に慰めの言葉を送る。


「私も『当たり』なんだけど……」

デビルバッツの描かれたカードを表にしたまもりが呟く。

栗田の隣でムサシも『当たり』と書かれたカードを表にした。

これで当たりを引いた面子が割れた。

「蛭魔。これは何のくじ引き合戦だ?」

ムサシが蛭魔に尋ねると、蛭魔は牙のような歯を覗かせて笑う。

そしてデビルバッツの様子を大人しく眺めていたツナを指差した。


「糞チビガキの世話係だ!!」


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あきゅろす。
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