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堕ちて混ざって笑いましょう
不安な朝

翌朝ツナが校門をくぐると、いつも通り野球部の面々がランニングから帰ってくるところだった。

「おはよー」
「おっす沢田!」

今日もツナはクラスメートと互いに挨拶をする。しかしすぐに違和感を覚え、首をかしげた。

「……あれ、山本は?」

ランニングから帰ってきた面子の中に山本が見当たらない。思わず近くにいたクラスメートに尋ねると、彼も首を振った。

「それが……今日まだ来てねーんだよ。連絡も何もねーし……でも山本が朝練サボるとか絶対あり得ねぇから、多分風邪かな?」

大丈夫かなアイツ……とクラスメート達は心配そうに互いを見る。

ツナは彼等にお礼を言うと不安げな表情を浮かべながら教室へ向かった。


(……山本、昨日から元気なかったし……大丈夫かな……)

ツナの中に昨日の辛そうな山本の表情が蘇る。

昨日の常ならぬ山本の様子を思い出し、ツナは少し悲しげに顔を歪めた。

(……それに……あの『陰』も気になるんだよな……)

二回ほど視た、不自然な陰。

ツナに全く影響を与えないことから、陰の正体がアヤカシではないことは分かっている。

だが普段決して部活を休まない自他認める野球馬鹿の山本が無断で部活を休んでいるという現状に、段々とあの陰の存在が気になり始めた。


教室についたツナは鞄を机の横にかけると、席に座った。

考え始めると不安はどんどん募り、教室の扉が開く度にツナは山本ではないだろうかと後ろを振り向いた。

しかし早く山本の姿を見て彼の体調や陰の存在を確かめたいツナに対して現実は厳しく、山本は一向に現れる気配がなかった。

(っていうかそもそも風邪だったら朝練だけじゃなくて授業も休むよな……)

約十人目のクラスメートを迎えたツナは、やっとその結論に至る。

そしてその結論にしばらく気付かなかった自分のアホさに自分で呆れ、一人ため息をついた。


時刻はまもなくショートホームルームの始まる8時半となろうとしている。担任先生が来る前に急いで教室へ入ろうと、何人かの生徒が廊下を走っていった。


その中で一際大きい足音がこの教室に近付いてきた。


ツナは最後の足掻きと教室の扉を振り返る。


大きな足音を立てて教室に入ってきたのは……山本ではなく、このクラスの男子生徒だった。


「大変だ!!」


内心がっかりしていたツナは男子生徒の慌てた様子に顔を上げる。そして次の彼の言葉に思わず全身で固まった。


「山本が屋上から飛び降りようとしてる!!」



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あきゅろす。
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