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堕ちて混ざって笑いましょう
蒸気機関車


獄寺隼人は非常に混乱していた。


何故か彼は走行中の列車の席に座っていた。

「……ここ、どこだ?」

辺りを見回すと、周りには英語が飛び交い、彫りの深い西欧人達が多く列車に乗車している。

窓の外には大自然とも言うべき岩山が広がっており、遠くには美しい湖が見える。

見れば見るほど並盛からかけ離れた現状に、獄寺は顔をひきつらせた。


「俺はいつの間に帰省したのか?んなバカな。落ち着け俺。落ち着いて考えろ」


獄寺は理解できない現状に頭をおさえ、努めて心拍やら呼吸やらを整えた。そしてこうなる前に何があったのか、記憶を探る。


(……確か俺は10代目のお宅にお邪魔して……そうだ!その帰りに野球馬鹿と怪しい光に包まれたんだ!……それでそのまま下に吸い込まれるみてぇな感覚と一緒に意識も消えて……気付いたらここにいたってわけか……くそっ情けねぇ!!)

獄寺は苛立ちに任せ、膝を殴る。じんわりと熱い痛みが膝から広がった。

獄寺は苦い顔を上げると、再び辺りを見回す。

やはりどこをどう見てもここは西欧のレトロな列車の中だった。日本人らしい人物は一人も乗ってない上、中には鎧を着た現代世界では有り得ないような乗客もいた。

(……神隠しだかタイムスリップだか知らねぇが面倒な事に巻き込まれたのだけは確かだな……。……野球馬鹿は……まあ何だかんだ図太ぇから良いとして……確かあの時異変に気付いた10代目が来てくださってたはず……!もし10代目までこのワケわからねぇ現象に巻き込まれでもしていたら……!!俺は右腕失格だ!!)

苦虫を百匹くらい噛み潰したような表情をした。

そして少しでも現状を把握しようと考え、少ない情報を整理する。獄寺は己の持ちうる全ての知識を持ち出し、最大限に頭を回転させた。


列車の中を見ても、窓の外を見ても、この国がどこの国かも分からない。分かっているのは、英語圏であるということだが……英語圏の国など腐るほどある上、列車の雰囲気からタイムスリップしている可能性も否めない。

(この列車は蒸気機関で動いてる……確か蒸気機関車が公共用鉄道に利用され始めたのは1825年英国……つう事は、タイムスリップしてるとしても200年以内か……よし、だったらボンゴレは存在するな……次の駅で下車してこの国と正確な年代を確認して……とりあえずイタリアに向かうか)

現状況で分かる最大限の情報を駆使し、獄寺はこれからの行動を頭の中で組み立てる。

恐らくポケットに入っているなけなしの金はここでは使えないだろう。

だがしかし、伊達に獄寺は一人で生きてきたわけではない。金がない中で旅をするなど数年前の獄寺にとっては日常茶飯事だった。

(密入国だろうが無賃乗車だろうがやってやる!待っていてください10代目!!……あと、ついでに野球馬鹿)

どこにいるのか、そもそもこちらに来ているのかすら分からない仲間達に誓うように獄寺は拳を握り締めた。





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