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堕ちて混ざって笑いましょう
淡い世界の中で

乳白色の世界。

現実味のないその世界に、ツナは一人ポツンと立っていた。

ツナは何故自分がそこにいるのか、そのことには疑問を持たずに辺りを見回す。


―――嗚呼、誰かがいる。


ツナの目が人影をとらえた。

ツナはそちらへゆっくり歩いていく。

人影は近付くにつれて徐々にハッキリとした人物像へと変わっていく。

そこに立っていたのは、長い黒髪に白い着物の女性だった。

―――何を見てるんだろう……

女性の顔は見えない。しかしその背中から、何処かを一心に見つめている様子が伺い知れた。

ツナは女性が見ているであろう先へと視線を移す。

すると先程まで何もなかった―――ただ乳白色が広がっていただけのはずの空間に、一人の男性が現れた。

男性は全身黒で統一された着物を来ていて、腰に刀を差している。

男性は女性の方を向く。

ツナの位置からは遠くてよく見えなかったが、男性は笑っている気がした。

対照的に女性は崩れ、地に伏せた。

声は聞こえてこないが、肩を震うその様子から泣いていることが分かる。

ツナは思わず駆け寄って声をかけようとした。

何が悲しいの?
泣かないで?

一体どんな言葉をかけようとしたのかは分からない。

ただ、何かを口から発しようとしたとき、突然ツナは誰かに肩と腕を同時に捕まれた。

―――何!?

驚いてツナは後ろを振り向く。

しかし後ろには誰もおらず、ただ捕まれていると言う感覚だけがツナを襲う。

思わず振り払おうとしたとき、辺りの空気がわずかに震えた。


「…………だ……」


―――え?

不意に、ツナの見知った声が世界に響き渡る。

ツナは動きを止めて耳を澄ませた。

「……じゅ……め……」

―――獄寺君?

「……きろ……ナ……」

―――山本?



「10代目!!」

「起きろツナ!!」


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あきゅろす。
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