堕ちて混ざって笑いましょう
帰宅
バイトを終え、暗くなった空の下、ツナはなるべく明るい道を通って家に向かう。
夜はアヤカシのゴールデンタイムだ。
昼には身をひそめるような小さなアヤカシも、夜には表に現れる。
最近自身の周りに現れるアヤカシが増えている事を肌で感じていたツナは、辺りを警戒しながら家路を急いだ。
「ただいまー」
多少小物のアヤカシと追いかけっこした事を除けば、本日は特に大物との遭遇も何もなく、ツナは自宅の玄関までたどり着く。
「お帰りなさい、ツッ君」
奈々はツナが帰ってきたのを見て微笑みながら迎え入れる。
「今日はツッ君の好きなシチューよ!だから早く手を洗ってらっしゃい」
ツナは奈々の言葉に素直に頷くと、早足で洗面所に向かった。
ツナは基本夕食は家で食べる。ツナの帰る時間は夕食を食べるには少し遅い時間ではあるが、奈々は決して先に食べることはせず、いつもツナの帰りを待っていた。
「今日はビーフシチューよ〜」
暖かいシチューを三つのお皿に注ぎながら、奈々は上機嫌にツナに言う。
ツナも自分の好きなメニューに顔を綻ばせた。
「どこに行ってたんだ?」
突然気配もなく背後に現れたリボーンにツナはビクリと肩を震わす。
「り、リボーン!」
ツナは抗議するようにリボーンの名を呼ぶが、それを意ともせずリボーンは言葉を繰り返す。
「こんな時間までどこほっつき歩いてたんだ?」
ツナはリボーンの問いにギクリと身体を強張らせる。適当にごまかそうかと口を開いたその瞬間、軽い金属音が耳に入った。
「正直に吐かねーと撃つゾ」
そう言ってリボーンは銃を構える。
(そうだ!コイツ読心術使えるんだった!)
チートすぎる技を持つリボーンに、ツナは少し慌てながら降参を示すように両手を上げた。
「わわわ分かったから!話すから銃をおろせ!」
そう言うとリボーンは銃口を下に向けた。しかし未だその手は銃から離れていない。
「早く話せ」
銃で脅すわ催促するわなリボーンに、ツナは心の中でため息を吐きながら口を開いた。
「……バイトに行ってたんだよ」
リボーンはツナからの予想外の言葉に、思わず聞き返した。
「バイト?」
ツナはリボーンの言葉に頷く。リボーンは少し考えるようなそぶりをすると、ツナを見上げた。
「バイトは校則違反だゾ?」
そう言うリボーンにツナは軽く肩を竦めた。
「正確には、働いてお金を貰うのが……ね。俺はお金を貰ってるわけじゃないから校則に違反はしてないよ」
ツナの言葉にリボーンはますます訝しむような表情をする。
「金じゃないなら、何を報酬に働いてんだ?」
リボーンの問いにツナは曖昧な笑みを浮かべた。
「俺が何かを貰う訳じゃないよ。厄介なものを引き取って貰うために、働いてるんだ」
リボーンはツナの言葉の意味がわからず、内心首をかしげた。
リボーンは読心術を使うことができる。だから、今のツナの言葉に嘘がないことはわかる。
言葉の真意をリボーンが聞き返そうと口を開いたその時、菜々の声が廊下に響いた。
「ツッ君〜!リボーン君〜!シチュー冷めちゃうから早く来なさい」
ツナは慌てて「すぐ行く」と答える。そして何か言いたそうにしているリボーンに気付かない振りをしてツナはリビングへと急いだ。
一人残されたリボーンは、少し考えるように俯く。
しかし次の瞬間にはいつものポーカーフェイスを顔に貼り付け、リビングへ歩き出していた。
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