堕ちて混ざって笑いましょう
沢田綱吉
「なぁなぁ!綱吉って何歳だ?」
ムサシが離れた後モン太がそう言って寄ってきた。
「綱吉くん具合悪いんだから……」
モン太を止めようとセナが後ろで注意するが、ツナは首を振った。
「少し疲れてるだけなんで大丈夫ですよ、小早川さん」
そう言うと、セナは「そう?あ、僕はセナで良いよ」と言いながらモン太を放す。
「俺は14歳、中学二年生です」
そう言うとセナがビックリしたように口を開ける。
「二歳も年下!?」
歳上ではないだろうと感じていたが、まさかセナは自分と同じくらいの体格の少年が二歳も年下だとは思わなかった。
とは言え、ツナのガタイが良いのではなく、二人が二人とも他より小さいだけなのだが。
「どこの中学?」
栗田が聞くと、ツナは一瞬戸惑った後に「並盛」と答えた。
「遠っ!」
思わず黒木が声を上げる。
「ってか並盛って、結構ヤベえ噂が立ってるあの並盛か?」
ヤバい噂?
その場にいたツナと蛭魔以外のみんなが戸叶の言葉に振り向く。
「ああ。不良の間ではかなり有名だぜ?並盛を支配してる不良集団がいるだとか、たった4人でヤクザ潰した奴らがいるとか。黒服スーツのヤバそうな集団が度々現れるだとか。」
戸叶の言葉に十文字も相槌を打つ。
「俺もいくつか聞いたことあるぜ。頻繁に爆発音やら銃声やらが町中で響く……とかな。ヒットマンやマフィアのドンが住んでるって噂もある。まあ噂は噂に過ぎねえだろうけどよ」
しかしツナは心当たりがありすぎて何とも返せなかった。
同時に並盛の皆の事を思い出し、顔色を悪くさせる。
「だっ大丈夫!?」
セナがツナの顔色に気付いて慌てる。
まもりも急いで飲み物を持ってきてコップに注いだ。
「…………」
その様子を見ていた蛭魔は、チラリとツナを一瞥すると、声を張り上げた。
「テメェら!!さっさと練習始めっぞ!!」
そう言ってマシンガン片手にメンバーを部室から追い出す。
時折本当に発砲させるため、やむ無くメンバーは外に出ることとなった。
「糞マネ!テメェもさっさと行きやがれ!」
一人だけツナから離れなかったまもりにタイムウォッチと記録表を投げ渡す。
「もう!ごめんね、綱吉くん。しばらくここで休んでて良いからね」
「いえ。色々ありがとうございます」
未だ顔色が悪いながらもツナは安心させようと笑顔を作る。
そんなツナを心配そうに見つめながらも、スポーツドリンクと大きめのタオルを置いて、まもりは出ていった。
部室にはツナと蛭魔だけが残る。
「…………ボンゴレファミリー十代目ボス」
突然の蛭魔の言葉にツナはビクリと肩を震わせ、蛭魔を驚愕した表情で見上げる。
「てめえのことだろ?沢田綱吉」
そこには楽しそうに口元を歪ませた蛭魔が立っている。
「中学一年生の時にボンゴレからアルコバレーノの家庭教師が派遣され、ボス教育が始まる。それからは裏社会の事件やお家騒動に巻き込まれる日々。その中で様々な人間と交流関係を持つようになったが、最近並盛中学に転校してきたテールファミリー令嬢、アリサ・テールにより嵌められ、仲間と信頼を失う」
ペラペラと挙げていくその言葉は全て事実で、ツナは唖然とする。
そんなツナに構わず蛭魔言葉を続けた。
「クラスメートからは暴行を受け、仲間内の居場所はアリサ・テールに奪われ、並盛での居場所を無くしたてめえはついに逃亡。今に至る」
あってるだろ?と笑う蛭魔にツナはどうして、と呟く。
「生憎情報網は広くてな」
蛭魔は黒い手帳を片手にケケケッと笑った。
「クリスマスボールも制覇して丁度暇してたんだ。テメェに協力してやるよ」
ツナはただ呆然と蛭魔を見上げていた。
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