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堕ちて混ざって笑いましょう
面影

「おはよーモン太」

「はよ!」

セナは学校に向かっているとモン太に会い、挨拶してから二人並んで歩く。

「そういや……綱吉の様子はどうだ?」

気になっていたのか、少しそわそわとしながらモン太はセナに尋ねる。セナは少し困ったように唸った。

「食事は……お粥ならゆっくり食べれば食べれるみたい。昨日の夜はちゃんと睡眠もとれてたし……ただ……」

そこまで言ってセナは昨晩の事を思い出しながら口をつぐんだ。唐突に顔を暗くした親友にモン太は眉間にシワを寄せて聞き返す。

「ただ……どうしたんだ?」

モン太の声にセナは少し顔をあげた。そのままセナは言うのを躊躇い逡巡したが、やがて口を開いた。

「ただ……具合が良くなるには多分時間がかかると思うんだ」

その言葉にモン太は複雑な顔をする。

すぐにモン太はどういう事かと聞き返そうとしたが、その疑問はセナによりやんわりと遮られた。

「……ごめんモン太……」

多分これは僕が勝手に話しちゃいけないと思うんだ。

そう言うとセナは、それ以上詳しくは話さなかった。ツナの前では明るく振る舞っていたものの、セナもまた困惑と混乱の中にいた。

モン太はセナの言葉と表情に、自分が思っていた以上にツナが深刻な状態であることを悟る。

少し考えるように俯いた後、モン太は明るい表情で顔をあげる。


「……じゃあよ、練習後今日みんなで見舞いに行こうぜ!!」


その言葉にセナはモン太を振り返る。

「よくわかんねーけど、綱吉がキツイなら励ましてやんないとな!!」

その言葉に今度はセナも表情を明るくした。

「うん……うん!!そうだよね!!」

そして二人は見舞いの計画をたてながら泥門の校門を潜った。



「……暇……かも……」

その頃ツナはセナの部屋に座りながら天井を見上げていた。

昨日今日と充分な睡眠をとることが出来たので、睡眠欲は全くと言って良いほど存在しない。しかし自分の部屋のように寛ぐのも躊躇われ、今ツナは部屋の隅に収まっていた。

(暇な時間そのものは嫌いじゃないんだけど……)

どうしたものかとツナは窓の外に視線を移す。


不意に外から明るい陽射しと共にセナ母の鼻歌が聞こえてきた。


ツナはおもむろに立ち上がると窓際まで近付く。

窓から庭を覗くと、そこには洗濯物を干しているセナ母の姿があった。

ツナは何ともなしにそれを眺める。

セナ母は楽しそうに鼻歌を歌いながら手際よく洗濯物を干していった。洗濯機によりしわくちゃにされた衣類の数々は、今ではセナ母の手で綺麗に伸ばされ太陽の下に整列している。


『ツッ君、ちょっとそこのハンガー取ってくれない?』


唐突に、セナ母の姿が母の菜々と重なった。

ツナは驚きに目を見開く。

『ツッ君そこのお茶菓子出してくれる?お茶にしましょ〜』

『もう……ツッ君はランボ君よりお兄ちゃんなんだから』


『あんたみたいに退屈そーに暮らしても一生、楽しく暮らしても一生なのよ!ああ生きてるって素晴らしい!と感じながら生きて欲しいのよ!』


次々に蘇り溢れる菜々との思い出。

優しい奈々の笑顔が浮かんでは消えていく。

「母さん……」

奈々は自身の言葉を体現するかのように、いつだって明るく笑っていた。

いつも楽しそうで、そして幸せそうだった。

そんな母の笑顔を見なくなったのはいつからだろうか。

怒ったような悲んでいるような、そんな顔ばかり見るようになったのはいつからだろうか。


『ツッ君、どうしてイジメなんてしたりしたの!?』


ツナは悲しみに顔を歪めると、思い出を振り払うように強く頭を振った。

いつの間にか歌は止んでいて、部屋は静けさを取り戻す。

ツナはゆっくりと窓際から離れると、そのままセナの部屋を後にした。


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あきゅろす。
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