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堕ちて混ざって笑いましょう
手当て


宣言した通りセナが部屋で待っていると、数分後ツナが俯きがちに入ってきた。

「…あ…の…………」

ツナは俯いたまま口を小さく動かすが、音を発する事なく口を閉じる。

そんなツナにセナは手招きをした。

「綱吉君。こっちにおいで」

ツナがそっと顔を上げると、セナは優しく笑っていた。その笑みに引き寄せられるかのように、ツナはゆっくりと近付いていく。セナはすぐ前の床を軽く叩いてツナがそこに座るよう促した。

「……セナさん……?」

促されるままに座ると、ツナは伺うようにセナを見る。

セナは座ったまま近くの棚から箱を取り出した。

「手当てしよう」

そう言って箱の中から消毒液や清潔な包帯を出す。

「練習とか試合で怪我することもあるから、ある程度は出来ると思うよ……多分」

最後に不安げな言葉を付け加え、苦笑いをする。そんなセナにツナは思わず口を開いた。


「何も……聞かないんですか?」


セナは手当ての準備をしていた手を止めた。

そして困ったように頬を掻く。

「聞きたくない……って言ったら嘘になるけど……でも、人が秘密を作るときはそれなりの理由があるってことも分かってるから」

あっ、綱吉君が話したいなら僕はいつでも聞くよ?

そう言って笑うセナに、ツナは強く拳を握る。

「ありがとう……ございます」

セナはツナに笑って頷いた。


「さ、手当てを始めよっか。上脱いでね」

そう言うとツナは素直に上を脱いだ。セナは痛々しいツナの傷を見て少し顔を歪める。しかしすぐに笑顔を取り戻すと、ツナに後ろを向くように言った。

「とりあえず背中の傷から始めるね」

ツナは頷いてセナに背中を向ける。

背中の傷は他の場所よりも治りが遅いように見えた。

(……背中は自分じゃ手当てしにくいからかな……)

セナはその事から何となく、最近のツナの並盛での生活に検討を付ける。

(……近くに綱吉君の味方はいなかったんだろうな……)

家族の事等は分からない。事情あって側にいないのか、ツナがこの状態を隠しているのか……最悪、育児放棄を受けているのか。

何はともあれ、ツナの具合の悪い事や家出等は全てこの傷が原因だろう。

セナはあまり傷に障らないように、一つ一つ丁寧に消毒していく。

中には化膿してしまっている物もあったため、市販の化膿止めを塗っておく。

だが、セナ一人に出きる事などたかが知れている。そのため、近いうちに医者に連れて行く必要があった。


「綱吉君、出来る限りの事はしたけど……これ、お医者さんに見てもらった方がいいと思う」

一通りの応急処置を終え、包帯だらけになってしまったツナにセナは言う。

「化膿してる所も一ヶ所じゃないし……火傷とかもこのままじゃ痕になっちゃうよ」

しかしツナはゆるゆると首を振った。

「医者は……ダメなんです」

そんなツナにセナはどうしてか尋ねる。しかしツナはただ「医者はダメだ」と言うだけだった。


「……分かったよ」

最初は医者へ行くよう説得していたセナだったが、ツナが折れる気がないことを悟ると渋々頷いた。

「でも傷が我慢出来ないくらい痛くなったらすぐ言うんだよ」

セナはそう言うと使い終わった包帯などを片付ける。ツナは申し訳なさそうな顔をしながらそれを見ていた。



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