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堕ちて混ざって笑いましょう
友達


目が覚めると部屋に獄寺君の後ろ姿が見えた。



「……ご…くでら…くん……?」

ツナが呼び掛けると獄寺は振り返る。

「10代目!!」

一瞬驚いた顔をした後、獄寺は心から嬉しそうに頬を緩める。

「気が付かれたのですね!!」

ツナが起き上がると、獄寺は水を差し出す。ツナはお礼を言って受け取る。そしてそれを飲みながら、いつもと違う違和感に心の中で首をかしげた。

(……苦しくない……)

霊を追い払えたとは言え強い邪気に当てられてしまったため、学校を出たときツナは息苦しさと強い倦怠感を感じていた。

しかし今はそれが嘘のように身体が軽い。

(いつもならしばらく引きずるのに……?)

常とは違う状況にしきりに首をかしげていると、獄寺は慌てた声を上げた。

「10代目!!どうかされましたか!?」

その声にツナは現実に引き戻される。

(あ……獄寺君いるんだった……)

普段自分の部屋に誰かがいるという環境に慣れていなかったツナは、一瞬頭から抜けていた獄寺の存在を思い出す。

大丈夫だと言うと、獄寺は安堵したように笑った。

「心配かけちゃってごめんね」

そのツナの言葉に獄寺は首を横に大きく振った。

「気にしないでください!俺がやりたくてやってるんですから!!」

そう言う獄寺に、ツナは一瞬きょとんとした。

(……『やりたくて』……)

『……獄寺君は俺にとって何なのかな……?』


不意に先程見た夢を思い出す。ツナは獄寺を見上げた。獄寺は薬を探しているのか救急箱の中を漁っている。

(獄寺君に聞いたらきっと『右腕だ』って答えるんだろうけど……)

マフィアはよく分からない、怖い、なりたくない。

だからこの人は、自分にとって部下でも右腕でもない。


(じゃあ何?)


出会い頭に爆殺されかけた。

色々あったけど和解した。

翌日一緒に退学させられそうになった。

二人で解決した。

学校で一緒にお弁当を食べるようになった。

そして今……俺の部屋で看病してくれている。

俺の心配をしてくれる。

これって……


(……友達?)


心の中で呟いた単語にツナはハッとする。

(そっか……友達、だ)

ツナが目を向けると、獄寺は少しそわそわしながら出来ることはないかとツナに尋ねる。

「水……はさっき飲みましたね……あ、氷嚢とかいりますか!?」

ツナは獄寺にゆっくり首を振った。

「もう大丈夫。獄寺君、看病してくれてありがとう」

その言葉に少し目を見開いた獄寺は、その直後嬉しそうに笑った。

(……友達……友達か〜……)

今まで遠い存在だった言葉に自然とツナの頬も緩む。


穏やかな空気の中、ツナは先程抱いた疑問の事を忘れていった。



「ただいま〜」

二人が遅めの昼食を食べていると、下から扉の開く音と共に菜々の声が聞こえてくる。

「あら、ツッ君帰ってるのー?」

ツナの靴を確認した菜々は二階に上がってきた。

「また『良くない子』に絡まれちゃったの?」

そう言いながらドアを開けた菜々は軽く目を見開いて固まった。

ツナはそんな母親に笑みを浮かべる。


「母さん、紹介するね。最近並中に転校してきた獄寺君。俺の……友達だよ」




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