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堕ちて混ざって笑いましょう
泥門デビルバッツ


「私の名前は姉崎まもり。あなたは?」

ツナは慌てて「沢田綱吉です」と答える。

少しだけ気まずい沈黙が降りる。

それからしばらくして、ツナは勇気を出して尋ねた。

「あの……どこに向かってるんですか?」

まもりは、短く声を上げるとツナに謝った。

「ごめんなさい、言うのを忘れてたわね。今私達が向かってるのは私の通ってる高校よ」

実は部活の買い出しの帰り道だったの、とまもりは左手に持っていたエコバッグを持ち上げる。

そこには粉状スポーツドリンクやら湿布やらが入っていて、彼女の部活が体育会系であることがうかがえる。

少し意外に思っていたが、よくよく考えれば彼女が選手と決まったわけではない。

むしろ買い出しをしているのだからマネージャーと考えるのが妥当だろう。

ツナは自分でそう納得すると、またうつむいて黙り込んでしまう。

「部活が終わるまで部室で休んでいると良いわ。本当は保健室で休めれば良いんだけど……生徒以外は利用できないの」

ごめんなさい、と謝られてツナはすぐに首を振った。

「こちらこそすみません。本当にありがとうございます」

そう言うと、まもりは安心したように笑った。


やがて二人はとある高校に辿り着く。

高校の門には『泥門高校』と記されていた。

(泥門まで来てたのか……)

ぼんやりとした頭で考える。

(随分遠くまで来たな……まあ電車とかも使ったしな……)

とにかく並盛から離れたくて離れたくて、何も考えずにここまでやってきた。


「部室はこっちよ。いらっしゃい」

まもりに言われて、そちらに付いていく。

校舎に沿って少し歩いていくと、そこにはカジノのような建物があった。

「……カジノ?」

そんなツナの呟きに、まもりは苦笑いのような顔を浮かべる。

「……ううん、部室なの……」

そう言うと建物の引き戸を開いた。

「ただいま〜」

しかしその瞬間、ツナにとって聞き慣れた、しかし普通は聞こえてきてはならない音−−−銃声が聞こえてきた。

ツナはその音にビクリと体を震わせる。

「おっせえぞ、糞マネ!!」

続いて遠くまで鋭く通るような男性の怒鳴り声が聞こえてくる。

まもり越しに中を覗くと、そこには金髪に髪を染め上げたいかにも不良風の男がマシンガンを片手に担いで目をつり上げて怒鳴っている。

「私は糞マネじゃありません!!ちょっと色々あったのよ!!」

しかしそんな男の様子に怯むことなく、まもりは言い返す。

そのまま二人が言い合いを始め、ツナは呆然とそれを眺めていた。


「……大丈夫?」

二人の横をすり抜けて、小柄な少年が中から出てきた。

重力無視な髪型の茶髪に気の弱そうな表情。

ツナは少年の周りに流れる自分に似た雰囲気に少しだけ落ち着く。

「あっいけない!ごめんね、綱吉くん」

まもりもツナを思い出し、こちらに駆け寄ってきた。

そしてそのままツナと少年を連れて部室の中まで入る。

「この子は沢田綱吉くん。具合が悪いみたいだから部室で休ませようと思って連れてきたの」

ツナをまもりが紹介すると、先程の不良男性がまもりに再び怒鳴った。

「何勝手に拾ってきてんだ糞マネ!」

「良いじゃない休ませるくらい!可哀想でしょ!?」

二人の口喧嘩にツナはオロオロと周りを見る。

しかし二人の言い合いには慣れているのか、他の面子はさして気にする様子もなくツナの周りに集まってきた。

「綱吉くん、この椅子に座りなよ」

そう言って椅子を持ってきたのは、横にも縦にもかなり大柄な青年。

「僕は栗田良寛っていうんだ」

優しい笑みを浮かべた青年に、ツナはお辞儀をする。

そのまま椅子に座らされると、他の面子も自己紹介を始めた。

「僕は小早川瀬那。よろしくね」

「俺は雷門太郎!みんなモン太って呼んでるぜ」

「フゴッ!小結大吉!」

始めに小柄な三人が自己紹介をし、それぞれツナと握手をする。

「十文字一輝」

「黒木浩二」

「戸叶庄三」

完全に不良とおぼしき三人に少しビビり気味にお辞儀をすると、セナが「見た目怖いけど悪い人達じゃないよ」と耳打ちをした。

「アハーハー!ボクは瀧夏彦!」

制服の胸元をバッと開きながら片足を上げた長身の青年が自己紹介する。

「「「アイツの認識はバカで良いぞ」」」

十文字、黒木、戸叶の三人が口を揃えてそう言った。

後ろで瀧が「アリエナーイ!」と叫んでいる。

「僕は雪光学」

どちらかというと体育会系より文化系に見える青年が挨拶をする。

「俺は武蔵厳。ムサシって呼ばれてる」

本当に高校生か?と疑いたくなるような厳つい顔立ちの青年が最後に寄ってきた。

「で、アイツが蛭魔妖一。うちの部のキャプテンだ」

ムサシは未だ言い合いを続けている不良男性を指す。

そちらに意識を向けると、もはやツナとは全く関係の無いことで言い合っている。

「あそこはアレが日常だ。気にすんな」

そう言ってムサシはツナの頭に手を置いた。


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