堕ちて混ざって笑いましょう
汚れた包帯
「あった!」
セナはパジャマと新品の下着を見つけると、それを抱えて脱衣所に向かう。
(サイズ……は多分大丈夫かな。身長同じくらいだし)
明日以降の服も自分のお下がりで大丈夫だろうかと考えながら脱衣所に入る。
もう既に脱衣所にはツナの姿はなく、浴室からは水音が聞こえた。
「お湯加減大丈夫?」
ドア越しに尋ねると、大丈夫だと返ってきた。
セナは洗濯物を分けるために洗濯籠の側に寄った。
(あ、サイズ……一応重ねて確かめてみようかな)
そう思い至ったセナは、籠の中に入っているツナの服を持ち上げて広げる。自分のパジャマも同様に広げ、ツナの服を重ね合わせた。
(……うん、大丈夫)
ほとんど同じサイズであることを確認したセナは洗濯物を次々に洗濯機へ入れていった。
(……あれ?)
最後にズボンを洗濯機へ入れた後、セナはあるものを見つけて首をかしげた。
それは、籠の後ろに人目につかないよう小さくまとめられたいくつかの包帯。
セナは脱衣所にこんなものあっただろうかと思いながら包帯を拾い上げる。拾った拍子に、小さくまとめられていた包帯がバラバラと広がった。
「……!!」
それを見たセナは目を見開いた。
その包帯はどれもお世辞にも使い物になると言える状態ではなかった。
血や埃で汚れており、布地のくたびれた様子からかなり長い間使用していることも分かる。
衛生上の問題を考えると、とうの昔に捨てるべき……それ。
(まさか……これ……綱吉君、の……?)
セナは包帯から視線を浴室の扉へとずらした。
セナは少し逡巡するように、包帯と扉とに視線を送る。
しかし、すぐに意を決したようにセナは浴室の扉へと腕を伸ばした。
「ちょっとごめんね」
そう声をかけ、セナはそっと扉を開けた。
「!」
中を覗くと、ツナは浴槽から驚いたようにセナを振り返る。
『もしかしてどこか怪我してるの?』
セナはそう聞くつもりだった。
しかし中を覗いたセナは、言葉を失ってしまった。
握っていた包帯がハラリと手から滑り落ちる。
ツナの首から下―――普段目につかない部分は、目も当てられない程にボロボロだった。
切傷、打撲傷、火傷……事故とは違う傷の付き方。
どう考えても故意にやられた……それも人目に触れる事のない場所を狙っての悪質な傷の数々。
「つ……なよし、くん……?」
セナはかろうじてそれだけ言葉を絞り出す。
ツナは少し瞳を揺らすと、すぐに目をそらした。
そんなツナにセナは冷静を取り戻そうと深呼吸した。
そして、再びツナを見る。
「……何が……あったの……?」
ツナは何も言わなかった。
セナはもう一度口を開きかけるが、何も言わずに口を閉じた。
黙ったまま下に散らばってしまった包帯を拾い上げ、浴室の扉を閉める。
「……ごめんね。部屋で……待ってるから」
扉越しにそれだけ言うと、セナは包帯を持ったまま脱衣所を後にした。
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