堕ちて混ざって笑いましょう
温もり
セナに家の間取りを大体教えて貰ったツナは、今はセナの部屋に座っていた。セナもツナの隣に座っている。
「具合は大丈夫?」
セナが尋ねるとツナは頷きながら応えた。
「夕方充分休ませていただいたので大丈夫です」
セナはそんなツナに良かったと笑む。
「これから夕飯なんだけど……母さんにお粥頼んであるんだけど……食べれそう?」
セナの問いにツナは少し俯いた。その様子にセナは慌てて声を上げる。
「でもそのあれだよ!?全部食べる必要ないって言うか……あ、でもちょっとは食べないと体に良くないけど……無理して食べる必要ないって言うか……!」
突然のセナの慌てようにツナは驚いて目を点にした。
それから少しだけ笑みをこぼす。
「せっかくなので頂きますね。ありがとうございます」
多分沢山は食べれないですが……と言うとセナは笑って頷いた。
「セナー、綱吉君ー!ご飯よー!」
一階からの母の声にセナは返事をしてツナを振り返る。
「行こっか」
「はい」
ツナも頷いて立ち上がった。
二人がリビングに入ると、テーブルの上には美味しそうな料理が湯気をたてて並んでいた。
セナに導かれ、ツナは空いている席―――セナの隣に座る。
「はい、綱吉君。食欲無かったら無理して全部食べる必要ないからね」
そう言ってお粥の入った椀を渡すセナ母にツナはお礼を言って受け取った。
「それにしても災難だったわね、綱吉君。ご両親が居ないときに体調崩しちゃうなんて……」
ツナはセナ達に言われた自分の設定を思い出しながら曖昧に頷いた。
『とりあえず母さん達への綱吉君の説明は〈両親が海外に短期出張中に体調崩した知り合い〉っていうのにしよう。これならバレない!……多分!きっと!恐らくは!』
そっと顔を上げるとセナ母と目があった。
「遠慮なんてしないで良いからね。ご両親が帰ってくるまでは、ここを我が家と思って楽にしてちょうだい」
純粋な好意を向けられ、ツナの中に嘘をついている事への罪悪感が芽生える。
しかしそれをツナはあえて無視した。
「さ、冷めない内に食べましょう」
三人はそれぞれ手を合わせた。
「「「いただきます」」」
ツナはレンゲでお粥を少量掬うと口に運んだ。
お粥の味と温もりが口一杯に広がる。
「……美味しい」
そう言ってツナは顔を綻ばせた。
そんなツナにセナ親子も顔を綻ばせる。
(温かい……)
ツナは温もりまでもを味わうかのようにレンゲを運び続けた。
「ごちそうさまでした」
ツナはお粥を食べ終わり、手を合わせた。他二人もその後すぐに食べ終わり、同様に手を合わせる。
「もう少ししたらお風呂も沸くから、ちょっと待っててね」
そう言ってセナ母は食器を片付けにキッチンへ入っていった。
「パジャマは僕のお下がりを貸すね」
ツナはその申し出に有り難く頷く。
その後二人はリビングのテレビの前でまったりと息を抜いていた。
不意に家に機械音のメロディが鳴り響く。
「あ、お風呂焚けた」
セナは立ち上がるとツナを手招きした。
ツナも立ち上がってセナについていく。
脱衣所に入ると、セナは風呂場の戸を開いた。
「あそこにシャンプーとかあるからね。タオルはこっち。あ、体洗うのはこれ使って。それから……」
セナは風呂場の道具の置場所をツナに大雑把に説明する。
「……こんなもんかな?パジャマと下着は後から持ってくるから。何か分からない事あったらこのボタン押して呼んでね」
最後に呼び出しボタンだけ教えると、セナは脱衣所から出ていった。
ツナはセナが出ていった事で閉まった扉を少しだけ見つめると、風呂に入る準備を始めた。
「っ……」
かけ湯をしたツナは一瞬眉をひそめた。
ピリピリとした痛みと共に、汗と埃が流れていく。
肌を駆ける痛みに耐えてからツナは風呂に浸かった。
(あったかい……)
依然お湯はツナの体に痛みを与えたが、それを差し引いても心地良かった。
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