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堕ちて混ざって笑いましょう
獄寺隼人


「絶対増えた!!アヤカシ絶対絶対増えた!!」

ツナは頭を抱えていた。

理由は簡単、彼の周りに現れるアヤカシの数が目に見えて増えたからだ。襲われる数も目に見えて増えたからだ。

全ては死ぬ気弾によってツナの大空の力が漏れ出したせい。

原因は分かっているので死ぬ気弾を撃たれないよういつも全力で逃げているのだが……いかんせん相手はヒットマン。逃げ切れないで結局撃たれてしまっていた。


(あああああ……アヤカシに喰われたくない……)


もう何回思っただろう事をツナはまた思う。

しかしそれも仕方ない。ツナにとって、アヤカシ喰われて死ぬことはどんな事よりも嫌だったからだ。

(でもこの調子じゃアヤカシに喰われる未来も近いかもしれない)


泣きたくなりながらツナは無敵の呪文を呟き続ける。

「……絶対大丈夫……絶対大丈夫」

「何が大丈夫なんだ?」

ベッドに突っ伏したツナがブツブツ呪文を唱えていると、いつの間にか部屋に入ってきたリボーンが尋ねた。

「……いつから……」

ドアの開く音聞こえなかっただけど?
そんなことを思いながら見やると、読心術を使ったリボーンがニヤリと笑う。

「俺は超一流のヒットマンだからな。で?何が『大丈夫』なんだ?」

ツナは「あー」と声をあげながら手を横に振った。

「別に……どうせ死ぬなら喰われ死にだけはしたくないなって話」

そう言ってツナは再び枕に突っ伏す。

それを見て何を思ったのかリボーンは「そうか」とだけ言うとニヒルに笑って部屋を出ていった。

ツナは、結局何しに来たんだ?と首をかしげながら、アヤカシ対策に無い脳みそ全てを注いでいた。



翌日、学校の裏庭にて。



「……リボーン?」

「なんだ?」

「俺……確かに喰われ死にが一番嫌だとは言ったけど……だからって爆死がウェルカムなわけじゃないんだけど……?」

「グダグダ言ってねえで殺し合ってこい」



ツナは『口は災いの元』という言葉を見に沁みて実感していた。



「冗談じゃないよ!!」

ダイナマイトを投げてくる転校生から必死に逃げるツナ。

(リボーンのやつ……そんなに俺を殺したいのか!!?)

火事場の馬鹿力よろしくツナはいつにない反射を見せ、ダイナマイトから逃げ惑う。

しかしそれが長く続くはずはなく、すぐに行き止まりに追い詰められてしまった。

「うそ!」

振り返ればそこには両手いっぱいのダイナマイト持ってたたずむ転校生。

「終わりだ」

そう言って転校生はツナに向かってダイナマイトを投げた。

(……あー……俺の悪運もここまでですか……)


頭の中の妙に冷めた部分がそう思ったのと、額に激痛が走ったのは同時だった。



「はぁ〜なんとか助かった……」

死ぬ気の消火活動により、全てのダイナマイトの火を消して助かったツナは地面にへたりこんでいた。

(……今回ばかりは命の危機脱出したし……死ぬ気弾撃ってくれたリボーンに感謝しないと)

しかしそこまで考えてツナはすぐに首をかしげる。

(……っていうかそもそも獄寺君けしかけたのリボーンだし!!それにまた死ぬ気になっちゃったからアヤカシ増えるし!!)

ああああ、と呻き声をあげながら項垂れていると、突然背後から声がかかってきた。

「御見逸れしました!!あなたこそボスに相応しい!!」

振り向くとそこには地面に手をついて頭を垂れている獄寺がいた。

「10代目!!あなたについていきます!!何なりと申し付けてください!!」

「はぁ!?」

リボーン曰く、マフィアには負けた奴が勝った奴の下につくという掟があるらしい。

状況をよく飲み込めずに目を白黒させていると、獄寺は俯いて話し出した。

「俺は最初から10代目ボスになろうなんて大それた事考えていません。ただ10代目が俺と同い年の日本人だと知ってどーしても実力を試してみたかったんです……」

そこまで言うと獄寺は一度言葉を切って顔を上げた。

「でもあなたは俺の想像を超えていた!俺のために身を挺してくれたあなたに俺の命預けます!」



「それで、それからどうしたの?」

「どうしたもこうしたも……先輩に絡まれたと思ったら獄寺君がダイナマイトで蹴散らして……そうかと思ったら突然アヤカシが集まってきて……結局大慌てでリボーン達誤魔化してその場からエスケープ……そのまま店に直行で今に至ります」

「あらあら、何だか逃げてばっかの一日だったわね」

「本当に散々な一日でしたよ……」

ツナは侑子にお茶とお茶菓子を出しながらため息を吐いた。

そんなツナに侑子はただ笑みを浮かべているだけ。

「……まあ今日あったことはそんなとこですかね……聞いてくれてありがとうございました。俺、夕食の買い出し行ってきますね」

一通り話し終えたツナはお茶を運ぶのに使ったお盆を持って部屋を出る。侑子はそんなツナを手を振って送り出した。

そしてツナが玄関に向かって行く音を聞きながら、侑子はお茶菓子に手を伸ばす。


「それにしても……獄寺君……だったかしら?彼の命、預かっちゃったわねぇ……」

ツナは気付いているのかしら?それがどれだけの意味を持つことなのか。


「きっと気付いてないのでしょうね」


ほんのりと甘い銘菓に舌鼓を打ちながら侑子は一人呟き目を細める。


「……石はとっくに転がり始めているわ……後はあの子が変わるだけ……」


そう言って空を見上げた侑子は、華咲くように艶やかに笑っていた。


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あきゅろす。
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