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堕ちて混ざって笑いましょう
店の日常


「ここどこ?」

「店よ」

「店?」

「そう。『ネガイがかなう、ミセ』」

「願い叶えてくれんの?」

「その代わり、対価を頂くけれど」

「……良いよ。俺が渡せるもんなら何でもあげる。だから俺の願い、叶えてよ」



―――これが5年前の、大空と魔女の一番最初の対峙―――



「ツナー!これ、ちょっと運んでちょーだい」

「これ……ってタンスじゃん!一人で運べるブツじゃないですから!!」

初めての対峙から5年が経った今、大空ツナは魔女侑子にコキ使われていた。

「だって模様替えしたくなっちゃったんだもん」

「なっちゃったんだもん……じゃないですよ!ダメツナ嘗めないで下さい!!」

しかし文句を言うツナに侑子はただ笑うだけで、手伝おうという素振りは一切ない。と言うより、その考えそのものがないようだ。

そんな侑子にツナは諦めたように項垂れると、深々とため息を吐いた。

「……仕方ない……マルーモロー手伝ってくれ」

奥でトランプで遊んでいる二人に声をかけると、二人は素直に返事をして寄ってきた。
「なあに?ツナ」

「なあに?」

二人はツナを中心にくるくると回りながらツナに尋ねる。

「侑子さんが模様替えしたいんだって。手伝ってくれる?」

そう尋ねると二人は元気よく返事をした。
ツナは満足げにうんうんと頷く。

「いやあ、マルとモロが侑子さん似じゃなくって本当に良かった」

「ちょっとツナ、どういう意味よ」

5年の付き合いともなれば、軽口も叩けるようになり、ツナは侑子の鋭い視線を流しながらタンスの側まで向かった。

「で?これをどこに移動させれば良いんですか?」

すると侑子は部屋の入口にあたる襖を指差す。

「そこ左に行った突き当たりの部屋の南側」

「……模様替えは部屋レベルでお願いします……」



その日の『バイト』の勤務時間が終わり、ツナは玄関にいた。

「じゃあ次は明後日来ますんで」

マルとモロは名残惜しそうにツナに手を振る。

「またね」

「またね、ツナ」

ツナも二人に微笑んで頷いた。

「またね。マル、モロ」

そして顔をあげると、少し瞳を揺らしつつも侑子の方を見た。


「……侑子さん。俺……後どれくらいで願い叶います?」


ツナが尋ねると、侑子はにっこりと笑った。

「ツナ熱心だから対価も結構溜まってきてるわ。あと一年か二年くらいでしょうね」

そう言われ、ツナは少し安心したように顔を綻ばせる。

「じゃあ……後二年頑張れば……俺が15になる頃には……」

「貴方が『アヤカシ』を見ることも、襲われることもなくなるわ」

まあその間に対価が上乗せされなきゃだけどね、と侑子意地悪く笑って付け足す。

その言葉に、かつて何度か上乗せされた対価を思い出して『絶対気を付けよう』と胸に固く誓う。

ちゃんと2年で終われば高校ではアヤカシとはおさらばの平穏な日々を遅れるのだ。

だったら中学生活など全てバイトに捧げてやろうではないか!どうせ遊ぶような友達もいないし!!

「じゃ、お疲れさまでした!」

そう元気よく挨拶すると、明るい未来を思いながらツナは意気揚々と帰っていった。


「とは言え、そう簡単に行かないのが人生なのよね」

ツナの後ろ姿を見送りながら、侑子はくすりと笑って扉を閉めた。

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あきゅろす。
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