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dream
第2話 任務
此処は何処だ。
まず一番にそう思った。


俺達は学園のお使いという名の忍務をこなしていた。
このお使いには、五年生を中心に7人の忍たまが選ばれた。

忍務は仮にも順調とは言えなかった。

敵に気づかれ、忍隊と追いかけっこ。
結局俺達は半分に別れ、敵の足止めをした。


「…片付いた…かな?」

「ああ、恐らくな」

「まだ気ぃ抜くなよ。」

「とにかく、先輩方を追いかけよう」


愚かしくも俺達を追ってきた烏を撃ち落とした。
焼き尽くした。
そこまでは覚えている。
しかし問題はその後だ。
安全圏に入り、先輩方とも連絡が取れた。
忍務は完了。
後は帰るだけ。

…帰るだけだった。

しかし俺は、突然おかしな睡魔に襲われた。
闇に意識を引きずり込まれるような、囚われるような、そんな感覚。

それからの記憶は全くない。
気付いたときには、見知らぬ部屋でうつ伏せに倒れていたのだ。


状況の分からない今、狸寝入りしながら周りの状況を確認する。
少なくとも、ここは屋外ではない。
どこかの屋敷の一部屋だ。
自分達は誰かに捕まったのだろうか。
それにしては、拘束されている様子はない。
幸いなことに、すぐ近くから3人の仲間の気配がした。
自分も彼等も怪我をした様子はなく、少しだけ安堵する。
近くに監視人の気配はなく、起き上がって良いものか悩む。
恐らく、他の三人も判断をつけかねているのだろう。

不意に、誰かの足音が響いてきた。
裸足なのだろう、ひたひたと張り付くような音だ。
足音は軽くあからさまで、相手の体重が軽いことと、気配を隠す気は無く、完全に油断している事を悟る。
そして、その周りに他の気配は感じられない。
冷静に冷静にと自分に言い聞かせながら、全神経を集中させる。

忍者屋敷の回転扉が開くような音がした。

足音がピタリと止む。
続いて、空気を呑むような音がした。
呼吸音が一定にならないよう注意をしながら、狸寝入りを続ける。
此方を観察するような視線を受けたと思ったら、急に周りが明るくなるのを瞼の裏に感じた。
灯りを付けたのだろうか。
急激な光量の変化に多少動揺する。
相手は部屋の中まで入ってきたが、警戒するように距離を取っている。

嫌な汗が背を伝う。


不意に、足音が近付いてきた。


ゆっくりゆっくり、警戒するように。

好機は一度きり

殺気を出さないように注意する。

後三歩…二歩…

………


射程圏内に入った。

相手が自分のそばにしゃがみこんだ気配がする。

私は素早く『敵』を取り押さえた。

懐から苦無を取り出し、相手の首に添える。


「動くな」



声を低く抑え、静かに言葉を放つ。
背後で三人が立ち上がる。

私は相手の姿をよく観察した。
自分の下に押し倒されている人物は、成人前後と思われる女性だった。
薄手の南蛮の衣装に似た服を着ていて、腕や足が露出されている。
武器を隠している様子もなく


「暴れたら殺す。大声を上げたら殺す。偽りを答えたら殺す。分かったな」


女は動揺を見せずに真っ直ぐに見返して来るだけだった。

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