Material
魔法×海賊12
あまりに端正に整った顔に思わず見とれていると、紅の乗った唇が弧を描いた。
「そんなに見つめねぇでおくんなぁ、お嬢ちゃん」
その言葉に我に返って慌てて目をそらす。頬が熱いのを自覚した。そんな私に彼は更に笑みを重ねる。
「俺はイゾウってんだ、16番隊の隊長をやっている」
この船に乗ってから四人目の隊長だった。私も名前を名乗って挨拶をする。
「今日はウチの隊が掃除当番だからな。それ食ったらお前さんも一緒に俺と甲板に来てもらうぜ」
私はその言葉にうなずくと、急いでデザートのヨーグルトを食べきった。
「ご馳走さま、サッチ」
片付けようと思い、空になったプレートを持って立ち上がると、サッチにプレートを取り上げられた。
「プレートは俺がついでに片付けとくから。頑張ってこい」
サッチはそう言って励ますように背中を優しく叩いてくれた。
「甲板滑っからよ、転ぶなよ」
「サッチもエースもありがとう」
二人の優しさにお礼を言って、私は優雅に歩くイゾウについて食堂を出た。
甲板に着くと、そこには若い海の男たちが掃除道具をもって集まっていた。何人かの貫禄のうかがえる人達が、若い人たちに掃除場所の指示を飛ばしている。
「隊長おはよーござまーす」
「おはざーっす」
イゾウが甲板を歩くと、左右から挨拶が飛び交った。イゾウもその一人一人に応える。
「嬢ちゃんはまだ船内の構造よくわかってねぇんだろ?とりあえず今日はここの掃除を手伝っといてくれや」
そう言ってイゾウは近くの柱に立て掛けられていたデッキブラシを指差す。私は頷いてブラシをとる。
「じゃあ俺は仕事があるんでな。後は他のやつらの指示に従ってくれ」
そう言ってイゾウはきびすを返し、船内に戻って行った。
私は髪の毛をゴムでひとくくりにし、腕をまくる。
「よし!」
気合いの掛け声を入れ、私は甲板で掃除する男たちの中に混じって掃除を始めた。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!