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魔法×海賊 9
マルコが出ていってから10分くらい経ち、男が一人ここにやって来た。彼はハグリット程の巨体に何本も傷を刻まれた大男で、サッチが入れ替わるように出ていく。

その際に大男にサッチが「隊長」と呼ばれていて驚いた。

大男は私にあまり興味はないらしく、入り口付近に胡座をかいて座ると、持参した本を読み始めた。チラリと見えた題名は『天候の読み取り〜グランドライン〜』だったので、彼はああ見えて航海士なのかもしれない。

話す相手もいなくなり、どうしても暇をもて余してしまう。杖もなく見張りをつけられた状態でどうしようもないのだが、しないよりはマシだとこれからのことを考えてみた。

(まずは杖を取り戻す必要があるわ。杖があればビーズバッグを呼び寄せられるし、バッグの中にはハリーのファイアボルトがあるからそれで空に逃げられる)

箒が苦手だとかは言っていられない。ハリーには申し訳ないが、ファイアボルトしかこの船から脱出する術はないのだ。

しかし、それ以前に杖を取り戻すためにはいくつもの難関があった。この監禁状態を脱する……というのは言わずもがな、杖の在処を突き止める必要もあった。

(この船とても大きいし……運任せで杖のあるところへ辿り着く確率は絶望的よね)

まったくとんだ悲劇だわ、とため息をつく。

チラリと目だけを動かして見張りの男を見れば、男も本から顔を上げてこちらを見る。しかし男はすぐに本へと目を落とした。

(ホント、どうしようかしら……)




知らない内に疲労が溜まっていたらしい。

ふと気が付くと、倉庫内の空気が変わっていた。電気はついていたので明るさは変わらないが、気温は下がり、外の活気は失われている。

「夜……」

「お目覚めかい?」

唐突にかけられた声にビクリと体を震わせる。倉庫のドアの方を振り返ると、マルコが立っていた。いつの間に見張りを交代したらしい。

「この状況で寝れるとは大物だよい」

呆れたように呟くマルコに顔に熱がたまるのを感じた。体勢を整えようと身じろぎすると、いつからかかけられていた毛布がぱさりとずり落ちる。その反動でヒヤリとした空気が肩を撫でた。

「これ……」

繋がれていない方の手で毛布を拾うと、マルコがああと頷いた。

「サッチのやつがかけていったんだよい」

全く甘いやつだよい、とマルコは呆れたようにため息をつく。

私は寒さに毛布の端を引き寄せる。これがなければ確実に風邪を引いていた。次いつ会えるかはわからなかったため、サッチにお礼を言ってほしいとマルコに頼む。するとマルコはなんとも言いがたい表情で後頭部をさすった。

「ほんとに杖がねぇと何も出来ねえんだな」

ポツリと、呟くように落とされた言葉に顔を上げる。

「そうよ。だから早くこんなもの取ってくれるとありがたいんだけど」

手錠を軽く叩きながら言ってみる。

正直、あり得ないと思いながら言うだけ言った言葉だった。

しかし、予想に反してマルコは少し考えるように手錠を見、そして私を見る。

様子をうかがっていると、パチリと目が合った。

「……良いよい」

予想外の言葉に一瞬反応できずに固まってしまう。しかし、マルコが錠の鍵を出し、私の手錠に差し込んだことでやっとマルコの言葉の意味を理解した。

「……良いの?」

思わずマルコの顔を覗き込む。マルコは苦虫を噛み潰したような表情で、私から顔をそらした。

「オヤジにゃ俺の判断に任せるって言われてる」

手錠から重い音がしたと思ったら、次の瞬間には手首が自由になっていた。たった半日繋がれていただけだったが、すっかり感覚がなくなっていたため、軽く上下に腕を振る。

「勘違いするなよい。おめぇを信用した訳じゃねえんだ。おめぇが少しでも変なことしようとしたら、即殺してやる」

マルコはそう言って背を向けると、ついてこいと短く命令した。


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