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novel
求めるものは

可愛い可愛い私の滝夜叉丸
あなたの髪はこの国一番に美しいわ

いい、滝夜叉丸?
あなたは大切な人を護れるよう、誰にも負けないくらい強くなるのよ

もうこんなに難しい漢字を覚えたの滝夜叉丸?
あなたは努力さえすればきっと誰よりも賢くなれるわ


滝夜叉丸、滝夜叉丸、
あなたは私の一番の宝よ



「どーして滝ちゃんはそんなに必死なの?」

ある日の夜
踏み鋤を片手に持ち、泥で服を汚した少年―――喜八郎は、同じく泥や汗で服を汚している少年―――滝夜叉丸に聞きました。

「滝ちゃんはもう沢山沢山持ってるじゃない。なのにまだ欲しいの?」

滝夜叉丸は質問の意味が分からないのか首をかしげました。

「何を言いたいのだ喜八郎?」

すると喜八郎は突然滝夜叉丸の髪を引っ張りました。

突然の事に驚いて一瞬固まってしまった滝夜叉丸でしたが、すぐに文句を言おうと口を開きます。

「何をするアホハチロー!」

しかしそんな文句も何のその。喜八郎は簡単に流すと口を開きました。

「滝ちゃんの髪は綺麗だよ?立花先輩には負けるけど……でも、立花先輩の次に綺麗」

滝夜叉丸の事を滅多に誉めることのない喜八郎のその言葉に、滝夜叉丸は再び驚いて固まってしまいました。

しかし喜八郎はお構い無しに言葉を続けます。

「滝ちゃんは強いよ?時折空回りしちゃうけど……でも武道大会で五年の先輩差し置いて何回も優勝してる。それに、滝ちゃんは賢いよ?忍者文字は苦手だけど……でも難しい文字の意味や歌を知ってる」

喜八郎は掴んでいた髪を離し、代わりに滝夜叉丸の頬を掴みました。

「ほら、滝夜叉丸は沢山持ってるじゃない。なのにどーしてその口は自分を追い詰める事を言うの?どーして?……それじゃあまるで……」

まるで一番じゃないといけないみたいだ。


そう言って言葉を切った喜八郎は滝夜叉丸の顔を覗き込みました。

滝夜叉丸は一瞬言い返そうと口を開きますが、何も言えずに閉じてしまいます。

そんな滝夜叉丸の目を見ながら喜八郎は尋ねました。


「滝ちゃんは何に取り憑かれてるの?」


喜八郎の言葉に大きく目を見開いた滝夜叉丸は、とっさに喜八郎の肩を押しました。

喜八郎は何の抵抗もせず、後ろに尻餅をつきます。

そのまま喜八郎は、背を向け走り出す滝夜叉丸をどこか悲しそうな目で見ていました。

「そんなに必死にならなくても……滝ちゃんはもう充分魅力ある存在だよ?」

喜八郎は小さく呟くと立ち上がり、持っていた踏み鋤で穴を掘り始めました。



喜八郎を突飛ばし、長屋まで走って戻った滝夜叉丸は肩で息をしながら廊下にしゃがみこみました。

その心に描かれるのは、幼き頃の追憶と先程の喜八郎の顔。

『何に取り憑かれてるの?』

先程の声が脳裏で聞こえてきたとたん、滝夜叉丸は喜八郎の言葉を振り払うかのように激しく首を振りました。


「……私はただ……高みをめざしているだけだ……」


まるで言い訳をするように呟くと、疲れたような顔をして、のろのろと長屋の自室へ入っていきました。



―――――

↓以下滝夜叉丸についての妄想



昔からある程度出来る子だった滝夜叉丸は母に沢山誉められて育ってきた。

しかし同時に母が度々口にした『一番』という意味を持つ言葉の数々に、次第に滝夜叉丸も『一番』に固執し始める。
学園に入り『一番』となることを促す声が無くなっても、滝夜叉丸は自分で自分を『一番である』と言い、それを実現させようと努力する。
自分の本当に欲している物が『一番』ではなく、一番となったことで貰える『賞賛』だと気付いていない滝夜叉丸はがむしゃらに努力をし続ける。

そんな中でも、自分が『一番』に固執するようになった理由は理解しているため、喜八郎の『取り憑かれている』という言葉に拒絶を示した。



…………以上、妄想でした。
意味不ですみません(汗)

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あきゅろす。
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