novel
オハヨウ
「作兵衛!朝だぞ!!」
耳元で五月蝿い声に、少年は眉間にシワを寄せながら目を開く。
すると目の前には朝から元気な友人の顔があった。
「おはよう作兵衛!」
「……おはよ、左門」
目を擦りながら作兵衛は起き上がる。左門は邪魔にならないよう作兵衛から少し離れた。
「珍しいね、作が寝坊なんて」
作兵衛が声に振り向くと、そこには畳んだ布団の上でだらしなく寝転がる三之助がいた。
「あぁ〜……なんか懐かしい夢見てな」
思わず夢ん中に長居しちまった、と呟く作兵衛に左門と三之助は笑った。
「一体いつの夢を見たのだ?」
布団を片付け、制服に着替え始めた左門が尋ねる。
作兵衛は少し苦笑いを浮かべながら左門の問いに答えた。
「忍術学園に来る直前の夢だよ」
作兵衛は今年、忍術学園の三年生へと進級した。
二年程前までは慣れない此岸に右往左往としていた作兵衛だったが、三年目ともなった今ではすっかり人間のフリも板につき、立派に忍たま生活を送っていた。
(俺がアヤカシだってのもバレちゃいねぇし……課題は今んとこ順調だな)
作兵衛は着替えを済ませながら考える。
最初の頃はやりがちだったドジも最近は無くなり、こちらでの生活は順風満帆となっていた。
(とは言え……まあ忍者の勉強はそれなりに大変だけど……)
作兵衛はこちらで生活する際、変化以外の神通力を自ら禁じていた。
それはもちろん自分の正体を勘づかれないためだが、お陰で身体能力は普通の人間の子供程まで落ちてしまった。
(神通力無しでの修行はキツかったけど……それめ慣れたし……もう特に問題はねぇかな)
そんなことを考えながら作兵衛は髪を結う。
朝の支度を整えた作兵衛はおもむろに立ち上がった。
「顔洗い行くぞ、おめぇら」
同室二人にそう声をかけると、作兵衛は軽く伸びをしながら歩き出した。
「作兵衛!今日の朝御飯は何だろうな!?」
「俺カツ丼食いてぇ……」
「……朝から重ぇよ……まあおばちゃんの手料理は何だってウマイけどな」
アヤカシはヒトに紛れ、ヒトと共に笑い合う。
(まあなるようになるだろ)
彼の周りで日常が巡っていた。
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