大空と錬金術師
国家錬金術師
「え?」
思わずツナは聞き返す。するとエドは歯を見せて笑った。
「俺の勤め先のホテルなんだよ」
結局ツナはエドに言いくるめられ、相部屋することになった。そして、連れてこられたホテルに呆然とする。
「……でかっ……」
連れてこられた先は、かなり立派なホテルだった。内装もしっかりしており、日本のビジネスホテルなんかよりずっと高そうに見える。
「エドの勤め先って……?」
思わずエドの顔を見ると、エドはポケットから懐中時計を出した。その懐中時計には、この世界に来てから、主に軍の回りで度々目撃するライオンの紋が彫られている。
「俺の勤め先は軍だよ」
ツナ達は部屋に案内されると、ソファーに座った。
「この国には『国家錬金術師』って資格制度があって、錬金術で特に秀でた奴−−−−つまり国家錬金術師の資格を取った奴を軍に引き入れる代わりに莫大な研究費や数々の特権を与えて優遇してんだ」
エドがアメストリスの軍制度を分かりやすいように説明する。
「ただし、国家錬金術師は軍人だ。少佐の地位も与えられてる。だから国家錬金術師になったやつは軍による召集があったら直ぐ様集まり、その技術をもって『人間兵器』にならなきゃならない。それに、国家錬金術師は国の税金食って研究するくせに国民に還元しない奴が多いこともあって国家錬金術師は『軍の狗』って呼ばれて、みんなに嫌われてる。」
ツナはエドの説明を静かに聞く。
「で、この銀時計が『国家錬金術師の証』。つまり、俺は国家錬金術師ってわけ」
ついでに大佐もな、と付け加えた。ツナはエドの言葉に納得したように頷いた。それならばエドやマスタング大佐があんなに強かった事が説明できる。そこまで考えて、ツナはある疑問に首をかしげた。
「あれ、アルは?」
そう言うと二人は苦笑いをして首を振った。
「僕は一般人。こんな鎧だし、勘違いされること多いけどね」
そう言ってアルは自分の鎧を叩いた。カーンッと鐘を鳴らしたような音が部屋に響き渡る。その音にツナは気を取られたが、エドが話を再開したので慌てて意識をそちらに戻した。
「ま、そう言うわけだから、軍のホテルであるここなら俺がいればツナの分タダにして貰えんだ。」
ツナはなるほど、と頷いた。その心中では、取りあえず野宿は免れることが出来た、と安堵している。
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