[携帯モード] [URL送信]

大空と錬金術師
傷の男

ツナ達は無言のままホテルまでの道を歩いていた。

誰も何も喋らず、ただ雨に打たれながら歩いている。


不意にツナの目の前が陰った。


顔を上げたときにはもう手遅れで、目の前まで迫っていた何かと正面衝突する。

「いっ……」

ツナは鼻を押さえて二三歩よろめく。

そのまま倒れそうになったとき、ツナは腕を強い力で引かれるのを感じた。

力のお陰でツナは無事体勢を整える。

その時やっとツナは自分が『人』とぶつかったことを悟った。

「あの、すみません……」

謝りながら前を見ると、そこにはサングラスをした男がいた。

男の肌は色黒で、サングラスの下からは十字の傷が垣間見える。

「えっと……ありがとうございました」

内心ビクつきながらも、支えてくれたことに礼を言うと、男はツナの腕を離した。

そのまま男は何も言わずに去っていく。

(あれ……?)

不意に錆びた鉄の香りがした気がした。

無意識に振り返るが、もう男は去った後で誰もいない。

(気のせいかな……?)

そもそも雨の中で匂いを感じる方がおかしい。

随分自分が参ってきていると感じながら前を見ると、既に兄弟は遥か遠くまで行っていた。

慌ててツナは二人を追いかける。



誰もいなくなった時計台下の大通り

雨は何時までも大地を洗い流し続けている



[*BACK]

18/18ページ

[戻る]


あきゅろす。
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!