大空と錬金術師
傷の男
ツナ達は無言のままホテルまでの道を歩いていた。
誰も何も喋らず、ただ雨に打たれながら歩いている。
不意にツナの目の前が陰った。
顔を上げたときにはもう手遅れで、目の前まで迫っていた何かと正面衝突する。
「いっ……」
ツナは鼻を押さえて二三歩よろめく。
そのまま倒れそうになったとき、ツナは腕を強い力で引かれるのを感じた。
力のお陰でツナは無事体勢を整える。
その時やっとツナは自分が『人』とぶつかったことを悟った。
「あの、すみません……」
謝りながら前を見ると、そこにはサングラスをした男がいた。
男の肌は色黒で、サングラスの下からは十字の傷が垣間見える。
「えっと……ありがとうございました」
内心ビクつきながらも、支えてくれたことに礼を言うと、男はツナの腕を離した。
そのまま男は何も言わずに去っていく。
(あれ……?)
不意に錆びた鉄の香りがした気がした。
無意識に振り返るが、もう男は去った後で誰もいない。
(気のせいかな……?)
そもそも雨の中で匂いを感じる方がおかしい。
随分自分が参ってきていると感じながら前を見ると、既に兄弟は遥か遠くまで行っていた。
慌ててツナは二人を追いかける。
誰もいなくなった時計台下の大通り
雨は何時までも大地を洗い流し続けている
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