大空と錬金術師
告白1
「エド、アル」
ホテルの玄関でハボックと別れた後、ツナは二人の名前を呼んだ。
「なんだ?」
「どうしたの?」
二人はツナの方を振り返って用件を促す。
ツナは少しだけ躊躇うように俯いた後、すぐに顔を上げて二人を見た。
「部屋に戻ったら聞いて欲しいことがあるんだ……」
三人は部屋に戻り、各々ソファやベッドに座った。
少し俯きがちのツナに、エドは声をかける。
「聞いてほしい話ってなんだ?」
エドは少しだけツナがこれから話すだろう話を察していた。だが、エドからは何も言わなかった。
何も言わず、ツナを促した。
ツナは緊張と迷いの混ざったような顔をしていた。
一瞬エドの方を見たツナは、目を伏せ胸の辺り−−−ナッツリングに手を当てて深呼吸した。
(……大丈夫)
その言葉だけを心に反芻させる。
ナッツもツナを安心させるように淡く熱を発した。
ツナが再び顔を上げたときには、その目には覚悟が秘められていた。
ツナは静かに口を開く。
「何から話せば良いかな……今から俺が話す話は、信じられない突拍子もない話だと思う」
エドとアルはツナを真剣な面持ちで見る。
「俺自身もよく分かってないし、上手く言える自信はないんだけど……でも二人には聞いてほしい」
俺を信じて、秘密を話してくれた二人だから、聞いてほしい。
二人は頷いた。
それを見たツナは、二人に言った。
「俺は多分、異世界から来た」
ツナは、自分がこの世界に来たときの事を話し始めた。
青い電流のような光や、足元に現れた陣の事。
目の前で陣に吸い込まれた仲間の事。
自分も吸い込まれ、気付いたらあの列車に乗っていた事。
ハクロ将軍の娘に色々確認した後、ここが自分にとって異世界であろう判断したという事。
それらを全て話し終えると、ツナは最後に二人の顔色を伺うように見た。
「こんな感じなんだけど……」
アルは表には分からないがかなり驚いていた。しかし、エドは全く顔色を変えていない。普段はリアクションが激しいのに珍しい。
(……兄さん知ってたな……)
アルは心の中で呟きながら今度はツナを見た。
ツナはこちらの顔色を伺うように見ている。
アルは安心させるように、ツナに言った。
「僕はツナを信じるよ」
だから、そんな風に怖がらないで。
そんな気持ちを込めて言う。
エドも「一緒に元の世界に帰る方法探そうぜ」と笑っていた。
ツナは少しだけ安心したような表情を浮かべると、謝罪を口にした。
「今まで黙っててごめん」
しかし二人ともそれに首を振る。
「仕方ないよ、事が事だもん」
「気にすんな」
二人とも笑っていた。
ツナは二人の言葉と表情に、詰まっていた息を吐く。
「話してくれてありがとう」
アルはツナにそう言うが、ツナは首を振る。
再び、ツナの表情が固くなる。
「……まだ、二人に言うべきことがあるんだ」
.
[*BACK][NEXT#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!