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大空と錬金術師
別れと出発

エドは手袋を嵌めると荷物を持った。

「世話になったな、ばっちゃん」

「ああ」

アルはデンに別れの挨拶がわりに骨を与えると、あることに気がついて辺りを見回した。

「あれウィンリィは?」

ピナコは二階を振り返ると煙管でウィンリィの部屋の窓を指す。つられてアルも窓を見上げた。

「徹夜続きだったからまだぐっすり寝てるよ。起こしてくるかい?」

「あー良いよ良いよ、起きてきたら機械鎧の手入れはちゃんとしろだのあーだこーだうるさいから」

ピナコはそうかい、と頷き、そしてツナの隣にいる獄寺を振り返った。

「あーあー、使えないパシリだったよ。いなくなるなんてせーせーするね」

「んだとこのクソババ……」

ピナコの言葉に目をつり上げる獄寺だったが、次の瞬間差し出されたものに動きを止めた。

「ほれ、これがアンタの給料だよ。あと取り上げてたタバコ」

そう言って差し出された封筒はかなりの厚みを持っている。この世界の金銭感覚が分からない獄寺にも、たった一週間やそこらのバイトでこれはもらいすぎだと分かった。

「……」

「ったく、若いんだからタバコなんて吸いすぎるんじゃないよ。口寂しくなったらこれでも舐めてるんだね」

ピナコは着ていたエプロンのポケットから飴玉を取り出して獄寺に差し出す。

「余計なお世話だしいらねぇよ」

「お節介は年寄りの特権さ。ま、押し付けられたと思って持ってくんだね」

断っても引かないピナコに舌打ちすると、差し出された飴をひっ掴んでポケットに突っ込んだ。そしてピナコから目をそらしたまま、小さく口を開ける。

「……世話んなった」

ツナとピナコにしか届かなかったであろうその言葉に、ピナコはカッカと笑った。獄寺は恥ずかしさを紛らすように舌打ちを打つ。

そんな獄寺の足元に駆け寄ったデンは、尻尾を振りながらワンと鳴いた。


「じゃあな」

「お世話になりました」

後ろ手に手を振るエドの隣でツナが丁寧にお辞儀をする。

「ボウズども、たまにはご飯食べに帰っておいでよ」

そう手向けられた言葉に、アルは素直に頷いたがエドは呆れたような顔をした。

「こんな山奥に飯食うだけに来いってか」

そんなやりとりをみて、アームストロングが目を細めて笑う。

「?なんだよ」

笑い声に気がついたエドが訝しげにアームストロングを見上げた。

「迎えてくれる家族……帰るべき場所があるというのは幸せなことだな」

アームストロングの言葉にエドはツンとそっぽを向いた。

「へっ、オレたちゃ旅から旅への根なし草だよ」

生意気なエドの言葉にアームストロングはまた笑う。

唐突に、パタパタと足音が辺りに響いた。続いて乱暴に窓が開かれる音がする。

「エド!アル!」

呼ばれた声に振り返れば、寝巻き姿のまま眠たげにベランダのサッシに寄りかかるウィンリィの姿があった。

「いってらっさい」

ウィンリィは眼を半分閉じかけながら、それでも兄弟を見てひらひらと手を振る。そんなウィンリィにエドはため息をつくと、片腕をあげた。

「おう!」

エドの返事に、ウィンリィは満足そうに笑みを浮かべて一行を見送った。


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あきゅろす。
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