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大空と錬金術師


食事を終えてそれぞれが自由にくつろいでいると、アルが呆れたような声をあげた。

「あーあ、またお腹出して寝てるよ、しょうがないな」

アルの視線の先にはソファに横たわり、腹を出して寝るエドの姿がある。それを見て、ピナコとウィンリィは笑った。

「まるっきりこれの保護者だね、アルは」

ピナコの言葉にアルはやれやれと肩をすくめ、ため息を吐く。

「ホントにもー、手間のかかる兄を持つと苦労するよ」

「これじゃあどっちが兄貴だかわかんないね」

ウィンリィは笑いながら棚から毛布を取り出すと、冷えないようにエドに被せた。そしてそのままエドの寝ているソファーに座る。

「お前達いくつになった?」

ピナコが煙管をくわえながら尋ねた。

「僕が14で兄さんが15」

それを聞いたウィンリィは、明るく笑ってエドの顔を覗き込む。

「あはは、あたしと同い年でこんなちっこいくせに“人間兵器”だなんて笑っちゃうよね。無防備に寝ちゃってさ」

「―――あ。ははっ!」
何かを思い出したような声をあげ、アルは吹き出すように笑い出す。突然のアルの笑い声にウィンリィはきょとんとした表情でアルを見上げる。アルはそんなウィンリィに、まだ少し肩を震わせながらも話し始めた。

「いやぁ『お腹出して寝て』って言えば、ツナと会う前……ユースウェル炭鉱に行ったときの事思い出しちゃって。そこの炭鉱の人達が上からの締め付けで困ってて助けてくれって言われたんだけど兄さん最初は助ける気なんかさらさらなかったんだ。だけどそこの親方の『炭鉱が俺達の家でカンオケなんだ』って言葉を聞いて―――結局助けちゃったんだよね。かなり無茶やってさ」

アルの話にピナコは豪快に笑う。

「かっかっか!そうかい“俺達の家”かい!そうだね……帰る家の大切さや無くなる辛さはお前達は身に染みてるもんねぇ」

アルは見慣れた天井を仰ぎ見た。

「うん、だからいつも本当の家族みたいに迎えてくれるばっちゃんとウィンリィには感謝してる。―――口に出さないけど兄さんもね」

しかしアルはそこで言葉を切ると、俯いて己の体を見る。

「それでもやっぱり生まれ育った家がないって言うのが現実なんだ。僕達家を焼いたことは後悔してないけど、時々無性に泣きたくなることがあるよ。いっそ一度思いきって泣いちゃえば吹っ切れるかもしれないけど……ははっ……この体じゃ泣くに泣けない」

手のひらで己の鎧に触れたアルは自嘲的に小さく笑う。

「泣ける身体があるのに泣かないバカもいるしね」

それまでアルの方を見ていたウィンリィは、膝を体に少し寄せ、そこに肘をつきながらエドの方を見た。その口許は寂しそうに笑っている。

「ほんと、強がっちゃってさ、このバカは……」



ドアの外には大小2つの人影があった。

一人は風呂上がりで偶然話を聞いてしまった獄寺、一人は空気を読んで退室したアームストロング。

ツナは獄寺と入れ替わりで風呂に入っていてここにはいない。

静かに涙を拭うアームストロングの隣で、獄寺は眉間にシワを寄せたまま壁に体を預けていた。

獄寺は、アームストロングのように三人の話で涙できるほど大人ではない。

だがそれを聞いても何もわからないほど、子供でもなかった。




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あきゅろす。
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