大空と錬金術師
夕食
「ぅえぇぇええ!?ハヤトがツナの探してた仲間で、ツナがハヤトの10代目なの!?」
夕飯中ウィンリィとアームストロングにツナと獄寺の関係を話すと、ウィンリィが叫ぶように驚いた。
「ふむ、世界を離れても決して離れぬその絆!運命とは正にこの事!!」
アームストロングは叫びながら感涙する。そんなアームストロングに再び力一杯抱き締められないよう、ツナは気持ち少しだけ彼から離れる。隣で獄寺が「芝生頭属性か……」と呟くのが聞こえた。
ウィンリィはツナと獄寺を交互にまじまじと見た。
「へー……ふーん……」
そんなウィンリィの視線が目障りだと言わんばかりに獄寺はそっぽ向く。しばらくしてウィンリィは乗り出していた身を引くと考えるように首をかしげる。
「うーん……でもツナってそんなに強そうに見えないけどなー」
こぼれるように呟かれた言葉にツナは顔をひきつらせ、獄寺は瞬時に目を吊り上げる。
「テメェどういう意味だウィンリィ!?」
獄寺が眼光鋭く噛み付くが、ウィンリィは怯えることなく言葉を返す。
「だって体ひょろひょろだし、背もちっさいし、性格も大人しそうだし……ハヤトの言ってた『10代目』がツナだって言われても正直ピンと来ない」
これなら私でも勝てそう。
そんなウィンリィの散々な言いように、ツナは思わず渇いた笑みを浮かべた。
「待て!強さに身長は関係ないだろ身長は!!」
ツナとあまり身長の変わらないエドは、すぐに会話に割り入るように否定を述べた。しかしウィンリィはまるで聞こえてないかのようにエドの主張を無視する。
ツナの隣では、ボスを侮辱された獄寺が怒りに肩を震わせている。
「10代目は控えめなお方なんだ!その強さは一目じゃ分かんねぇんだよ!!好き勝手な事言ってんじゃねぇぞこの機械オタク!!」
沸点を軽く超えた獄寺がウィンリィに吠えかかる。
「あーはいはい」
「さっさと食わないと冷めちまうよ」
しかしそんな獄寺をウィンリィもピナコも慣れたように軽くあしらった。二人の態度に獄寺はギリギリと歯軋りする。しかしツナが作るのを手伝った夕食をそうそう無下には出来ず、大人しくスプーンを動かす。
(二人とも獄寺君の扱いに慣れてるーーー!?て言うか獄寺君は何て俺の事説明してたんだろ……)
ツナに絶大なる忠誠と信頼を寄せる獄寺は、往々にして彼の理想のボスであるツナを過剰表現することがある。色々誤解されてなきゃ良いけど、と思いながらツナはサラダを食べていた。
「さて、大体食い終わったね」
ピナコはテーブルを見回してそう言うと、煙管に火を付ける。そして獄寺の方を振り向いた。
「ハヤト、アンタは居なかったから知らないだろうが……そこの小僧の腕を三日で一から作って調整しなくちゃならない」
ピナコはエドを顎で指しながら現状を説明する。
「はぁ!?三日!?」
思いもよらないハードスケジュールに獄寺は唖然とした。
「ってことだからハヤト、アンタには昼間いなかった分までバンバン働いて貰うわよ!」
ウィンリィはそう言って立ち上がると、笑いながら獄寺の首根っこを掴んで無理矢理立たせる。獄寺はすぐに手を振り払うと露骨に眉間にシワを寄せた。そんな二人の様子をピナコはカッカと笑い飛ばす。
「アンタの最後の仕事だ、しっかりおやり」
ピナコのその言葉に、獄寺は今にも文句を言おうと開きかけた口を閉じた。ケラケラと笑っていたウィンリィも笑みを消す。獄寺は少しだけ考えるように固まると、深くため息をついた。
「チッ……そこの豆は一応10代目の恩人だからな」
『一応』の部分を思いっきり強調しながら獄寺は呟く。
「仕方ねぇから手伝ってやるよ。その代わりバイト代弾めよ、ババァ」
頭をガシガシと掻きながらそう言い捨てると獄寺はウィンリィの後ろについてドアの方へ向かう。そんな獄寺に慌ててツナは声をかけた。
「あっ、何か俺に手伝えることある?」
ツナの言葉に獄寺は振り返って目をしばたかせる。そしてすぐに笑みを浮かべると首を振った。
「お気持ちは嬉しいですが……意外に細かい作業ですので。こちらの事は気にせず、10代目は長旅に疲れたお体を休めていて下さい!」
そう言われてしまってはツナは手を出せない。獄寺は今度こそ部屋を出ると、ウィンリィの作業場のある二階へ上っていった。
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