大空と錬金術師
再会
エドと少年はそれから何を話すでもなく歩いていく。幾分もたたない内にピナコの家に着いた。
エドは庭にツナとアルがいないのを見て、そのまま玄関から家に入る。
「ただいま〜」
エドが声を上げる一方、少年は無言で奥へと入っていく。エドは廊下を歩きながら片手で器用に上着を脱いだ。
家の中には美味しそうな香りが漂っている。キッチンの方から包丁の音や何かを洗う音などが聞こえてきた。キッチンから聞こえてくる音が複数重なっていることから、エドはキッチンで作業しているのはピナコだけではないと気付く。
(ツナも手伝ってんのかな?)
エドは廊下の上着かけに上着をかけるとキッチンの方へと足を向けた。
一方少年は二階へ続く階段に足をかける。しかし次の瞬間エドの言葉に足を止めた。
「ばっちゃんー、ツナー。アルどこか知らねぇ?」
少年は階段の一段目に足をかけたままの体勢で、目を見開いて固まる。そしてゆっくりとエドを振り返った。
そんな少年をよそにキッチンからはエドへの返事が返ってくる。
「日が暮れてきたからって、さっきアームストロングさんがリビングの方に運んでたよ」
ツナの声を聞いた瞬間、弾かれたように方向転換した少年は、そのまま早足でキッチンへ向かう。突然の少年の行動に驚いたエドはキッチンの入り口で少年を振り返った。しかし少年はそんなエドを無理矢理押し退ける。エドは慣れない足でバランスを保つことができずそのまま倒れた。しかし少年はそんなことには構わず、勢いのままにキッチンへ飛び込むように入る。
そして大きく口を開いた。
「10代目!?」
シチューを煮込む間にサラダ用の野菜を洗っていたツナは、エドが帰ってきた音に顔をあげた。
「ばっちゃんー、ツナー。アルどこか知らねぇ?」
そう尋ねながらエドはキッチンへ入ってくる。
「日が暮れてきたからって、さっきアームストロングさんがリビングの方に運んでたよ」
ツナは先程のアルを担ぐアームストロングを思い出しながら応えた。その応えにエドはなるほどと頷きかけて驚いたように廊下を振り返る。同時に、二階の階段の方からドタドタと早足の足音が聞こえてきた。
ウィンリィが二階から降りてきたのだろうかとツナが首をかしげていると、足音の主とおぼしき人がエドの背後にやってくる。そしてそのままエドを押し退けるようにキッチンへと入ってきた。
「10代目!?」
バランスを崩し倒れたエドに目を向けていたツナは、その声と呼び名に視線を上げる。
ツナの視線の先には銀の髪を振り乱し翡翠の瞳をこれでもかと見開く、ツナの探し求めていた仲間の姿があった。
ツナは思わず持っていたトマトを手からこぼした。しかしそんなことには気付くことなく、震える唇を動かす。
「ご……く……でら……君?」
ツナに名を呼ばれた少年―――獄寺は安堵や喜びが混ざり合ったような表情を浮かべた。そして眉をハの字に寄せ、前へ足を踏み出す。
「じっ……10代目ぇぇえええよくぞご無事でぇぇええええ!!」
ツナのそばまで寄った獄寺は感極まったように叫び声を上げ、勢いよく頭を下げる。そんな獄寺の姿にエドは唖然とした表情を浮かべる。
「獄寺君も無事で良かったよ!!」
いつもなら困ったような顔で獄寺を止めるツナも、今回ばかりは止めることを忘れて安堵の笑みを浮かべていた。
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