大空と錬金術師
修理
エドとアルはイーストシティからここに来るまでの出来事をウィンリィとピナコに話して聞かせた。全ての話を聞き終わると、エドの肩の接続部の状態を見ていたピナコは顔をあげた。
「―――で、その賢者の石の資料とやらを手に入れるために一日も早く中央に行きたいって言うのかい?」
ピナコの要領を得た言葉に、エドは頷く。
「そう。大至急やって欲しいんだ」
ピナコはそんなエドの顔をちらりと見ると、今度はエドの足元へ移動した。そして生身と機械鎧の二本の足の長さを比べる。
「うーん……腕だけじゃなく足も調整が必要だね」
ピナコは機械鎧の足の方が少し短いのを見てそう呟いた。それを聞いたウィンリィは意地悪げにニヤリと笑う。
「あら、一応身長は伸びてんのね。この前測った時は……」
「Oh!No!!」
ウィンリィが身長を言おうとした途端、エドは大声をあげてウィンリィの声をかき消した。
そんな二人の様子にツナは思わず苦笑いをし、アルは肩をすくめる。慣れているのかピナコは二人の大騒ぎに全く動じることなく機械鎧のメンテナンスを続けた。
「足の方はこれがあるから良いとして、腕は一から作り直さなきゃならんから……」
「ええ?一週間くらいかかるかな」
エドはウィンリィからピナコへ視線を戻すと眉をハの字にする。
しかしピナコは煙管をゆっくり吸うとニヤリと笑った。
「なめんじゃないよ、三日だ」
ピナコは工房の隅にある箱から大体エドの足と同じくらいの長さの木の義足を見繕う。それを持ってエドの所へ戻ると、エドの機械鎧を外して義足を取り付けた。
「とりあえず三日間はスペアで我慢しとくれ」
エドはその言葉に素直に頷く。そしてゆっくり立ち上がると壁沿いに歩いてみた。
「っと……」
左足で一歩目を出した途端エドは軽くバランスを崩してしまい、近くの棚をとっさに掴む。
「やっぱ慣れてない足は歩きにくいな」
バランスを立て直しながらそう言うと、エドはまるで感覚をならすようにその場で足踏みをした。
ピナコからエドの機械鎧を受け取ったウィンリィは、慣れた様子でそれを肩に担ぐ。
「削り出しから組み立て、微調整、接続、仕上げと……うわ、カンペキ徹夜だわ」
三日間の予定を立てたウィンリィはハードスケジュールに思わず顔をしかめた。そんなウィンリィにエドは申し訳なさそうに謝る。
「悪いな、無理言って」
するとウィンリィは振り返ってエドに笑いかけた。
「一日でも早く中央に行きたいんでしょ?だったら無理してやろうじゃないのさ」
そしてウィンリィはエドの近くに寄ると背中をバシッと叩いた。
「その代わり特急料金がっぽり払って貰うからね!」
背後からの思わぬ攻撃に、エドは足で踏みとどまることが出来ず床に頭からダイブする。
「わーーー!!エドーーー!!」
ツナが驚きの声を上げ、慌ててエドに駆け寄った。そんな二人を見ながらウィンリィは「あ……」と声を上げて顔をひきつらせる。
「……慣れない足だっけ……」
床から恨めしげに睨んでくるエドにウィンリィは苦笑しながら「ごめんごめん」と謝った。
「……ったく何なんだあの狂暴女は!!」
エドは頭にできた瘤をさすりながらぶつくさと文句を言う。そんなエドにアルは「何を今更」と軽く言って笑った。
「すごい元気な子なんだね」
二人のやりとりにツナが苦笑しながらそう言うと、アルは「伊達に僕らの幼なじみやってないよ」と肩をすくめながら応えた。
「でも……俺とほとんど歳変わらないのに機械鎧作れるなんて凄いね」
ツナはウィンリィのことを手放しに称賛する。そんなツナにエドは頭をさする手を止め、顔をしかめながら笑った。
「アイツは根っからの機械オタクなんだよ」
そう言うエドにツナは何も言わずに笑いかえした。
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